「大変よかった。こういう熱さこそ東京モーターショー、ひいては日本の自動車市場に足りないものです!」と熱っぽく語るのは、タイでバンコクモーターショーをじっくり見てきた自動車ジャーナリストの鈴木直也氏。
どこがどういうふうに熱かったのか? そもそもタイの自動車市場ってどんな感じなのか? じっくり伺ってみました。
※当記事メイン写真は、タイでは「神」扱いの日産GT-Rと開発責任者(2017年〜)の田村宏志氏。
文:鈴木直也
■アセアンにおける自動車の聖地・バンコク
われわれ自動車メディア業界で「モーターショー」というと、フランクフルト、ジュネーブ、そしてデトロイトあたりを取材するのが定番だ。
いわゆる“先進国”のモーターショーでは、注目のニューモデルが世界お披露目されることが多いし、EVや自動運転技術など、自動車の未来を左右するハイテク展示も盛りだくさん。とうぜんメディアの注目度も高い。
そのいっぽうで、成長率という点では先進国のモータリゼーションは頭打ち。
販売台数を伸ばしているのは、中国を筆頭とするアジア圏の途上国が中心だ。先進国モーターショーを取材すると、環境やエネルギー問題をどう克服するか、難しい問題に頭を悩ませるが、途上国のモーターショーはもっとアッケラカンと「クルマ大好き! クルマ欲しい!」という熱気に包まれている。
ジャーナリスト的には、クルマが直面する課題について取材して小難しいことを言わなくちゃいけないのだが、単純にクルマ好きが元気をもらえるのはどちらかというと途上国モーターショー。取材していても、じつはソッチの方が面白い。
その雰囲気的は、ちょうど日本が50年前に経験したマイカーブームみたいな感じ。ワールドプレミアのニューモデルや、EV/自動運転のコンセプトカーは出てこないけれど、モーターショーとそこに集まる観衆のクルマ熱はすごいものがあるのだ。
そういう「これからモータリゼーション盛り上がるぜ!」というエネルギーを実感するには、毎年3月末に開催されるバンコク・モーターショーがお勧めだ。
ご存知のとおり、タイは「アジアのデトロイト」といわれるくらい世界中の自動車メーカーが工場進出している国で、国内マーケットは80万台程度だが輸出を含めた国内生産は200万台に迫る。
900万台の日本と比べればまだまだだが、アセアン諸国ではダントツの自動車大国。モーターショーの盛り上がりも域内随一の規模といっていい。
エアチケットや宿泊代などの経費も、海外モーターショーとしてはとってもお手軽だ。
LCCを使えば成田~ドンムアンが3万円以下。モーターショー会場の「インパクト・チャレンジャー」という施設はスワンナプーム空港より古いドンムアン空港の方が近くて好都合。空港からタクシーに乗れば千円足らずで会場まで移動できる。
モーターショーに展示されているクルマの見どころは、アジア市場向けに造られた日本車と、意外なくらい充実している右ハンドル欧州高級車だ。
東南アジア諸国の例に漏れずタイも日本車天国で、2017年のデータで日本車シェは約85%。日本では売っていないクルマもたくさん走っていて、これが意外にカッコよくて面白いのだ。
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