WRCホモロゲマシン 栄光のランチアデルタはなぜ異常高騰中なのか?

WRCホモロゲマシン 栄光のランチアデルタはなぜ異常高騰中なのか?

 WRC(世界ラリー選手権)参戦のためのホモロゲーションモデルとして市販された「ランチアデルタHFインテグラーレ」。その相場高騰が止まらない。

 というか「価格がASK表示ばかりでよくわからないが、ごく一部の価格が表示されている物件から推測すると、どうやら相場はかなり高騰しているようだ」というのが正確なところである。

 10年ほど前までは300万円も出せば買えたはずのランチアデルタHFインテグラーレは2021年の今、はたして「いくら」になっているのだろうか?

 そして「宇宙イチ壊れるクルマ」という都市伝説もあったデルタHFインテグラーレは、今もなお「壊れまくるクルマ」であり続けているのか?

 そのあたりの真実を、リアルな中古車事情に詳しく、なおかつ1994年式ランチア デルタHFインテグラーエボルツィオーネIIのオーナーでもあった伊達軍曹が徹底解説する。

文/伊達軍曹
写真/伊達軍曹、ランチア

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■ランチアデルタHFインテグラーレとは?

ランチアデルタHF 4WD(1986年)。グループAのホモロゲーションモデルとなった
ランチアデルタHF 4WD(1986年)。グループAのホモロゲーションモデルとなった

 非常に有名なクルマであるため、いまさら感はあるかもしれないが、一応ランチアデルタというクルマのヒストリー紹介からはじめよう。

 1980年代後半から1990年代初頭にかけてWRCで伝説を作ることになるランチアデルタは、もともとは「初代フォルクスワーゲン ゴルフの対抗馬」的な実用FFハッチバックとして1979年に誕生した。

 デザインを担当したのは工業デザイン界の巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロ。ゴルフの対抗馬とはいえ、そこは高級系に振ったブランドであるランチアらしく内装にアルカンターラを多用するなど、「小さな高級車」路線ではあった。

 そして、それまでは改造範囲が極度に広いグループB規定で戦われていたWRCだったが、1986年をもってグループBが廃止され、それに代わって改造範囲が狭い「グループA規定」が採用されると、ランチアはデルタでWRCに参戦することを決定。

 参戦公認を得るための市販車(いわゆるホモロゲーションモデル)として、地味なファミリーハッチバックであったデルタに167psの2L、DOHCターボエンジンとフルタイム4WDを組み合わせた「デルタHF 4WD」を発売した。

 そしてデルタHF 4WDのグループAマシンは、WRC参戦初年度でいきなりワールドタイトルを獲得するに至った。

ランチアデルタHFインテグラーレ(1987年)。駆動方式はフルタイム4WDを採用
ランチアデルタHFインテグラーレ(1987年)。駆動方式はフルタイム4WDを採用

 デルタHF 4WDは、1988年にはブリスタフェンダーに+185psエンジンの「HFインテグラーレ」へ進化し、翌1989年には2L DOHCエンジンを16V化した「HFインテグラーレ16V」へとさらに進化。

ランチアデルタHFインテグラーレ16V(1989年)。16バルブ化されたエンジンの最高出力は、200psを発生
ランチアデルタHFインテグラーレ16V(1989年)。16バルブ化されたエンジンの最高出力は、200psを発生

 この世代から、大型化したエンジンを収めるためボンネットが盛り上がった形状となり、ヘッドランプやフロントバンパー周辺に、開けられる限りの「通気穴」が開けられるようになった。

 HFインテグラーレ16VのグループAマシンで連覇を重ねたランチアは1992年、エボリューションモデルである「ランチアデルタHFインテグラーレ16Vエボルツィオーネ」を発売し、WRCにも投入。

ランチアデルタHFインテグラーレ16Vエボルツィオーネ(1992年)。ブリスターフェンダーは、これまで以上に盛り上がった形状
ランチアデルタHFインテグラーレ16Vエボルツィオーネ(1992年)。ブリスターフェンダーは、これまで以上に盛り上がった形状

 この通称エボIの市販車版のエンジン最高出力は210psとなり、ブリスターフェンダーの張り出しも過去最高レベルの量とカッコよさに到達した。

 1992年シーズンで前人未到の6連覇を達成したランチアワークスチームは同シーズン終了をもってWRCから撤退したが、市販バージョンのエボルツィオーネ(進化)は続いた。

 1993年には「ランチアデルタHFインテグラーレ16VエボルツィオーネII」が発売され、2L、DOHCターボエンジンの最高出力は215psとなり、燃料噴射がシーケンシャル式となると同時に、ホイール径は15インチから16インチに拡大。

ランチアデルタHFインテグラーレ16VエボルツィオーネII(1993年)
ランチアデルタHFインテグラーレ16VエボルツィオーネII(1993年)

 ワークスとしてラリーに投入されることはなかったこの通称エボIIだが、「最終進化型である」ということと「それまでと比べれば信頼性も向上した」ということで大人気となり、また今なお世界中で大人気を博している世代でもある。

 その後、エボIIの限定車として黄色の「ジアッラ」や青メタリックの「ブルー・ラゴス」を発売。

 そして1995年に生産された最終ロットは、日本向け仕様はソリッドなボルドーレッド+ストライプの「コレツィオーネ」という車名に。そして本国仕様はレッドパール+ストライプ無しの「ディーラーズコレクション」との車名で発売された。

ランチアデルタHFインテグラーレエボルツィオーネII特別限定車コレツィオーネ(1995年)
ランチアデルタHFインテグラーレエボルツィオーネII特別限定車コレツィオーネ(1995年)

 ……というヒストリーを踏まえ、あらためて考えてみたい。「ところで今、ランチアデルタHFインテグラーレは“いくら”で売っているのか? そして、購入後はやっぱり壊れまくるのだろうか?」ということを。

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