今年の東京オートサロンはコロナ禍の影響でリアルでの開催は中止となったが、チューニングパーツの老舗であるHKSが「あなたの旧車に最新の技術、未来の技術を」というコンセプトを掲げた、“アドバンスドヘリテージ”と呼ぶエンジンチューニングのプロジェクトを発表した。
かつてのGT-Rの心臓部「RB26DETT」を用いて「600ps・20km/L」のエンジン開発を達成しようというこの試み。本稿ではその詳細について、そしてHKSへのオンライン取材の様子をご紹介する。
※本稿は2021年2月のものです
文/ベストカー編集部、写真/HKS
初出:『ベストカー』 2021年3月26日号
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■かつてのGT-Rの心臓部が最新技術で生まれ変わる!
“アドバンスドヘリテージ”は、2015年9月の国連サミットで提唱されたSDGs(社会的な持続可能な開発のため、2030年をメドにしたアジェンダ)へのHKSとしての回答、ユーザーからの「思い入れのある旧車をずっと大事に乗り続けたい」、「旧車の排ガスや燃費といった環境対応が心配」といった声に応えるものとして、プロジェクトが開始された。
具体的には、チューニングされるエンジンはR32からR34までの第2世代のスカイラインGT-Rを中心に搭載されたRB26DETTで、開発目標は現在の排ガス規制をクリアし、WLTCモードの総合燃費をリッター20kmとしたうえで、RB26のチューニングではほどほどのレベルとなる600psを達成する、という壮大なものだ。
■“アドバンスドヘリテージ”を支える4つの新技術とは?
“アドバンスドヘリテージ”の発表にあたり、目標実現のために盛り込まれる4つの新技術も公開された。以下、紹介していくと(※表記はHKS公式発表に沿う)、
●プレチャンバ……F1などのレーシングエンジンに採用されている点火系の技術で、プラグの先端を比較的小さな容積で覆うプレチャンバ先端に設けられたオリフィス(穴)からジェット火炎を噴射することで急速燃焼を可能とする。
●バーチカルターボチャージャ……バーチカルターボチャージャは搭載角度に制限のないターボチャージャで、配管のレイアウトを含めた搭載性の改善による効率の向上、環境性能では触媒の早期活性による排ガスのクリーン化といったメリットを持つ。
●デュアルプレナムインテーク……一般的なサージタンク(燃焼する空気を溜めるパーツ)が空気溜まりは1か所なのに対し、デュアルプレナムインテークではプレナム(空気溜まり)を連続して配置することで、空気の流入速度を高め、吸気温度を低減する。これによりパワーと熱効率が向上すると同時に、各気筒への空気の配分も均等化される。
●デュアルインジェクション……高出力化にはインジェクタの大容量化も必要になるが、1本の大容量インジェクタでは正確な燃料噴射が難しいため、インジェクタを1気筒当たり2本とすることで、より正確な燃料噴射を実現し、エンジンレスポンスの向上や排ガスのクリーン化に貢献する。
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