今年2021年フルモデルチェンジが期待されている日産の主力ミドルクラスSUV「エクストレイル」。ご存じのとおり、北米では、エクストレイルの北米版「ローグ」がすでに新型となっていることから、デザイン的には、(フェイス違い等はあるかもしれないが)おおよその見当はついている状態。
注目なのは「パワートレーン」だ。
「国内販売における電動車の比率を、2023年度には6割に引き上げる」としている日産。昨年登場した、キックスも新型ノートも、e-POWER車のみであることからも、次期型エクストレイルも、少なくともe-POWER車が設定されることは間違いない。
このe-POWERに関して、日産は、先日発表した欧州専売SUV「キャシュカイ」の新モデルにおいて、VCターボを発電用エンジンとする新e-POWERを発表した。また、ほぼタイミングを同じくして、次期型e-POWER専用の、発電専用ガソリンエンジンで熱効率50%を実現できる技術も公開している。
国内において「e-POWERのみ」という強気の戦略は、システムに相当な自信がなければできないことだ。
本稿では次期型エクストレイルに搭載されるe-POWERがどういったものになるのかを予想するとともに、新しい技術の登場で今後、e-POWERはどのような進化を遂げていくのか、現時点でわかっていることをもとに考察してみよう。
文/吉川賢一 写真/NISSAN、ベストカー編集部
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■次期エクストレイルには新型e-POWERの搭載は確実か!?
すでに発売されている、北米の新型ローグは、2.5L直4ガソリンエンジンのみの設定だ。前述したように、日本のエクストレイルでは、e-POWERのみとなるかはわからないが、少なくともe-POWER車が設定されることは間違いない。
問題は「どんなe-POWERシステムか」ということになる。ここで参考となるのが、エクストレイル/ローグとプラットフォームを共用する兄弟車である新型キャシュカイのパワートレーンだ。新型キャシュカイには、2種類のパワートレーンが採用されることが明らかとなっている。
ひとつは新開発の12Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた1.3Lの直噴ターボエンジンだ。最高出力136ps/最大トルク240Nmの6速MTと、156ps/260Nmの6速MTもしくはエクストロニックCVT仕様となる。ダウンサイジングターボを用意するのは、廉価なモデルとして販売台数を稼ぐためであろう。
そしてもうひとつが、排気量1.5Lの可変圧縮比エンジン「VCターボ」を発電専用エンジンとして搭載した新e-POWERだ(以下、e-POWERターボと呼ぶ)。
VCターボ自体は、すでに、北米アルティマや、インフィニティQX50などには、排気量2.0Lサイズのものが搭載されており、「V6並みのパフォーマンスと直4並みの燃費を両立する、最も美味しい圧縮比にコントロールすることができる究極のエンジン」だ。
このVCターボを発電専用エンジンに採用することによって、最も美味しい圧縮比にコントロールし、発電効率を上げることが可能となっていると思われる。新e-POWERの最高出力は140kW(187ps)、最大トルクは330Nm。CO2排出量は現時点では未公表だ。
ちなみに、新型ノートが搭載する1.2Lのe-POWERは、最大出力85kW(114ps)、最大トルク280Nm、CO2排出量は79g/km(WLTCモード基準、※2WDの再軽量モデルの数値)と、2021年CAFE規制をクリアすることができる。
新型ノートのおよそ1.2倍はパワフルになった、新型キャシュカイ用のe-POWERターボは、規制値をクリアすることは際どいところだが、欧州のユーザーが求めるパワーと、低いCO2排出量を達成してくるはずだ。
そして、このe-POWERターボが、そのまま次期型エクストレイルに搭載されるというのが、濃厚なストーリーだと筆者は考えている。
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