ジープ『ラングラー』のEVコンセプトが発表された。ついにクロカン4WDのラングラーまでもがEV化される時代になってきた。
見た目だけでなく、走りのほうも質実剛健で人気の現行型ラングラーのデザインを生かしたものになっている新型EV。しかし、ラングラーに消費者が求めるのは高い走破性だ。EVになっても従来モデルのような走りはできるのだろうか?
その走りへの期待と、クロカン4WDだからこそ抱える不安について、現在わかる情報から分析していきたい。
文/片岡英明
写真/Jeep
【画像ギャラリー】ジープ初のバッテリーEV、『マグニート(Magneto)』コンセプトカーを写真でチェック!!
■初代ジープの血を色濃く受け継いでいる『ラングラー』というクルマ
4WDシステムを採用したSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の原点であり、その代名詞的な存在となっているのが「ジープ」だ。
そのルーツとヒストリーは、第二次世界大戦中の1941年に登場した多目的軍用車の『ウィリスMB』に始まる。ウィリス・オーバーランド社は、戦後になって民間向けに手直しして生産を受け継いだ。その後、アメリカンモータースを経て、Jeepはクライスラーの1ディビジョンに組み込まれた。
『初代ジープMB』の血を色濃く受け継いでいるのが『ラングラー』だ。『ジープCJ』の後継として1987年に登場し、4気筒と直列6気筒エンジンを設定している。幌を外せばオープンになる2ドアのコンバーチブルだったが、2代目のTJでストレッチ仕様が加わり、ついには4ドアモデルも登場した。ラングラーに代表されるジープは、オフロードで無敵の4WDモデルである。最近の主役となっているクロスオーバーSUVなどは相手にしない。
ジープシリーズは日本には左ハンドル車だけでなく右ハンドル車も入ってきた。メカニズムだけでなくルックスも硬派そのものだから日本でも安定して売れ続けている。これまでJeepはピュアEVを発売していない。2020年9月に2021年モデルとして『ラングラー4xe』を送り出したが、電動化の第1弾はプラグインハイブリッド車だ。
■ゼロエミッションの波がジープにも押し寄せてきた
2021年3月22日、衝撃的なニュースが世界を駆けめぐった。ピュアEVのオフロード4WDを発売していなかったジープが、ついにバッテリーEVを発表したのである。アメリカのユタ州モアブで定期的に開催し、2021年は3月27日に始まる「2021イースター・ジープ・サファリ」に出品するために、ジープ・ラングラー初のEVモデルを製作したのだ。発表されたコンセプトカーのネーミングは『マグニート(Magneto)』である。
ジープはアウトドアを活躍の場としているが、山間部や草原に入り込んで環境破壊することは許されない。仕事で踏み込むにしてもCO2などの有害な排気ガスを垂れ流さないクルマが求められるのである。そこでジープも地球に優しいゼロエミッションビークルを開発し、販売することを決断したのだ。
被せるボディは『ラングラー・ルビコン』の2ドアモデルのものを使った。だから誰が見てもジープとわかるルックスで、伝統の丸型2灯式ヘッドライトや縦基調に並んだ7本スロットグリルなど、ラングラーのアイデンティティも受け継いでいる。フェンダーは張り出しているが、林道やオフロードでの極限走行を考慮してかオーバーハングは短い。ボディサイズはかなりコンパクトだ。
マグニートは量産車ではなくEVコンセプトカーだが、開発者の狙いはよくわかる。動力性能は、3.6LのV型6気筒エンジンをしのぐほどの実力を秘めていた。搭載しているモーターは285psの最高出力と370Nm(37.6kgm)の最大トルクを発生する。これにエンジン搭載車と同じように6速MTを組み合わせた。停止から60マイル(約96km/h)までの加速は6.8秒の俊足だ。オフロードより、高速道路などの舗装路で卓越したパフォーマンスを見せるはずである。
800ボルトシステムに対応したバッテリーを4個並べ、トータルのバッテリー容量はリーフe+をしのぐ70kWhだ。充電口は、左側のフロントフェンダー後方に確認できた。オフロードなど、ヘビーデューティな使い方を考慮していることは、バッテリーパックに防水加工を施し、スキッドプレートで保護していることからわかる。航続距離は未発表だが、舗装路なら400km前後は走れるはずだ。
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