2021年3月29日、ホンダ、川崎重工、スズキ、ヤマハ発動機の4社で構成する電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム(2019年4月に発足)は、相互利用を可能にする交換式バッテリーとそのバッテリー交換システムの標準化に合意したと発表した。
※コンソーシアム:共同事業体
四輪車と比べて大容量のバッテリーを搭載しにくく、走行距離に課題を持つ電動二輪車。そこで、駆動用バッテリーを取り外しできるようにし、バッテリーの残量が少なくなったときに別のバッテリーと交換可能にするモデルが登場してきている。
そんなバッテリーが共通化され、相互利用されることは、ユーザーにとってはプラスとなると考えられる。しかし、業界の将来性という点では課題もあると考えられる……。今回は、その課題とは何のか? 考察していきたい。
※本稿は2021年4月のものです
文/国沢光宏
写真/HONDA、YAMAHA、編集部
初出/ベストカー2021年5月10日号
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■二輪メーカー4社の電池共用化が二輪業界斜陽の始まりといえる事情とは何か?
二輪メーカー4社が電気バイク用電池の共通化を発表した。同じ規格の電池をたくさん作ることでコストダウンできるし、ガソリンスタンドなどにバッテリーステーションを作っておけば、気軽に交換可能。つまり電気バイクのエネルギー源になる電池を、どのエンジンでも使えるガソリンと同じように扱おうということなんだと思う。
このニュースに接し、ポジティブな評価をした人が多いんじゃなかろうか。しかし私は「二輪業界の本格的な斜陽の始まり」だと考えている。なぜか?
電池の共用化をしなければならない最大の理由は前述のとおり「電池が高い」ことだと思う。共通化することでコストダウンできるけれど、安くなったぶんを利用者に還元するかは不明。むしろ競争がなくなるため、売る側で価格を決められるようになるだろう。
加えてレンタルというシステムを作ると慈善事業じゃないため「電池価格+電力料金」に利益を乗せることになります。毎日レンタカー借りるより自分でクルマを買ったほうが安いのと同じこと。
一方、電池の共通化をすると、社外品の電池を作るメーカーからすれば最高の商機到来になる。すでに電動工具やビデオカメラなど、楽天やアマゾンで探すと社外品の電池がたくさん流通してます。価格は半額以下! 純正1個分の価格で3個買えたり、大容量タイプ2個だったり。リチウム電池の場合、従来のニッカド電池やニッケル水素電池よりさらに純正電池との価格差が大きくなってくる傾向。しかも上海工場製のテスラも採用してる中国特産品のリチウム鉄電池が出てくる。
このタイプのリチウム電池、安くて高性能だ。寿命は充放電サイクルで4000回以上あるうえ、圧倒的な安全性を持つ。それでいて安価。おそらくホンダが電気バイク用に開発したモバイルパワーパック(容量1kWh)程度なら、高くて3万円くらいだと思う。
このバッテリーを使うと、5万㎞走って充放電回数1700回。1回=30km走行あたりの電池価格は17円。それに電力料金(夜間電力なら12円)を乗せても29円にしかならない。
レンタルのシステム、フル充電ずみ電池が1個あたり100円以下になると思えない。そんな金額じゃビジネスにならないです。こう書くと「リチウム電池は普通の電池と違いセキュリティ機能を付けられるから社外品など使えないようにする」と主張する人もいるが、さらに複雑なセキュリティを構築している日産『リーフ』ですら社外のリユース電池を搭載して稼働させられるようになっている。
それだけじゃすまない。中国の工場なら製造技術は確実に盗まれるし、そもそも日本メーカーの電気バイクだってモーターやインバーターなど主要部品を海外から調達することになるだろう。
今まで一番高い技術力やノウハウ必要だったエンジンは不要になり、車両価格における価格が高い電池も海外に持って行かれる。こうなると海外で日本のバイクと同等の品質を持つ製品が安価に作られるようになる可能性もある。10年後の二輪業界を心配してます。
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