コロナ禍で自動車株は値上がりしたのか? 自動車メーカーの今の経営状況を徹底分析!

コロナ禍で自動車株は値上がりしたのか? 自動車メーカーの今の経営状況を徹底分析!

 直近米国での物価上昇懸念が高まり、早期の金融引締めの思惑から長期金利が上昇するなかで、一時3万円台を回復した日経平均株価も2000円近く値を下げています。

 そんななか、先週発表された2020年度の自動車会社各社の決算内容は新型コロナウイルス感染拡大の影響で各社とも販売台数は大きく落ち込みましたが、そのなかでも増益を達成した会社もあれば大幅に減益になった会社もあり、明暗が大きく分かれました。

 そこで自動車会社の決算の概要と株価の推移、今後の見通しを経営アナリストの柳澤隆志氏がレポートする。

文/柳澤隆志
写真/トヨタ 日産

著者・柳澤隆志 PROFILE:外資系証券会社に25年勤務、米系証券会社東京オフィスにて史上最年少で最上級の職位であるマネージングディレクターに昇格し市場・投資銀行業務に精通、現在経営アナリストとして独立。
 社会人2年目で初代BMW Z3を購入、その後1996年式ポルシェ993カレラ4Sを21年間乗った後、新車同様のフェラーリ458イタリアが直近納車され、そのNAサウンドと切れ味鋭い走りを目下楽しんでいる。2018年式ヤマハYZF-R1も保有。

【画像ギャラリー】日本の自動車メーカーを牽引するトップの面々


自動車会社の株価推移と投資環境:コロナ以前と今との比較

 初めにこちらのグラフをご覧いただきたい。日本がコロナの影響を受ける前の2020年1月を100%として今の自動車会社の株価の水準を示したものだ。

2020年1月6日の終値と2021年5月14日の終値を比較、日産、スバル、三菱に関しては投資家からの評価が厳しいことが分かる(出典:各種公表資料より筆者作成)
2020年1月6日の終値と2021年5月14日の終値を比較、日産、スバル、三菱に関しては投資家からの評価が厳しいことが分かる(出典:各種公表資料より筆者作成)

 ホンダとトヨタのみはコロナ前の株価水準を回復しているが、他は値を下げており、日産、スバルと三菱の株価は大きく出遅れているのがわかる。

 そして自動車株で最良のリターンを記録したホンダでも15.6%の上昇なのに比べ、日経平均は同時期に21%上昇している。

 つまり自動車会社株に投資するおカネを日経平均にインデックス投資していれば5%以上の超過リターンが取れていたことになる(ちなみに同時期にテスラの株に投資していればコロナ禍にもかかわらず約6.5倍になっていた(ドル建ベース))。

 ややテクニカルになって恐縮だが、日経平均は225銘柄が均一にウエイト付けされた単純平均と思われがちだがそうではない。

 ファーストリテイリング(ユニクロ)とソフトバンクグループ、東京エレクトロンのトップ3銘柄だけで日経平均中24%強のウエイトを占め、ウエイト上位10銘柄の合計は4割を超える。自動車会社が含まれる運輸・公共セクターのウエイトはわずか2%程度しかないのに対し技術セクターはなんと約48%、消費セクターも約25%を占める。

 コロナ禍の影響でテレワークを始めこれまでのコミュニケーション手法が大きく変わることで恩恵を蒙る技術セクターと実質大部分がファーストリテイリング1社の値動きで説明がついてしまう消費セクターと比較して、投資家の伝統的な自動車会社への見方は厳しいといえるだろう。

 現在自動車業界はCASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)革命と環境意識の急激な高まり、脱炭素化・環境規制強化などにより巨額の研究開発・設備投資が必要とされ、その負担に耐えられるプレイヤーのみが生き残れるとの危機感から巨額な費用を掛けた苛烈な開発競争が繰り広げられている。

 またテスラをはじめとする新興勢力、資金も技術も才能も豊富なIT業界などからの新規プレイヤーの挑戦も受けている。

 また急激なIT機器需要の高まりやルネサスの工場火災で半導体の調達競争も激化しており、海外でのワクチン接種の進捗、密とならない移動手段である自動車での移動への選好で自動車需要が回復する中で自動車向け半導体不足によりせっかくの需要回復が取り込めていない。

 さらにコロナで落ち込んだ景気が回復する中で非鉄金属やレアメタルなど自動車生産に必要とされる原材料価格も高騰を続けており、原価上昇による収益性悪化にも苦しめられている。

 この厳しい環境の中で各社が生き残りをかけて速いスピードで変化と進化を遂げていかなければならず、将来を見通すことが極めて難しい業界と見られており投資家はそのリスクに対してプレミアムを要求せざるを得ない状況にある。

次ページは : トヨタ、ホンダ、日産の2020年度決算概要と今後の見通し

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!