スポーティなクルマだけでなく、コンパクトカーやSUV、ミニバンにまで装備されていることがある「パドルシフト」。しかし、このパドルシフトは、納車された直後は頻繁に使っていても、そのうち飽きて使わなくなってしまう装備の筆頭。使わなくても運転はできるので、あってもなくてもいい装備ではあります。
それでもなぜ、パドルシフトは無くならないでしょうか。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN、HONDA、SUBARU、MITSUBISHI、SUZUKI、DAIHATSU、MAZDA、ベストカー編集部 ベストカーweb編集部、エムスリープロダクション
【画像ギャラリー】スポーティセダンからラージミニバンまで!! パドルシフトのあるクルマをギャラリーでチェック!!
あってもなくてもいい
パドルシフトは、1980年代後半にF1のフェラーリに搭載したのが始まり、といわれています。
それまでは、レーシングカーでもHパターンのシフトやIパターンのシーケンシャルシフトが使われていましたが、0.01秒以下を競うレースの世界で戦うドライバーにとって、一瞬でもステアリングホイールから片手を放す時間があることは、タイムロスとなるばかりでなく、危険でもあります。
そういったことから、シフト操作の時間短縮と、シフトミスの頻度低減を目的として、パドルシフトは誕生しました。
日産GT-Rやトヨタスープラ、ホンダNSXのような、サーキットなどでのスポーツ走行も考えられるクルマであれば、F1と同じようなメリットは享受できるでしょう。しかし、一般的な乗用車では、パドルシフトで操作しなければならない理由はありません。
オートマチックトランスミッション(AT)車は、Dレンジに入れさえすれば普通に走れますし、仮に強い加速が必要ならば、アクセルペダルを深く踏み込んで、「キックダウン」を使えばよいだけ。
坂道などで速くなりすぎた車速を落とすには、シフトノブ側でオーバードライブやBレンジ(EVやハイブリッド車で回生ブレーキが強めに効くシフトポジション)を使うか、ブレーキを使えば、減速度は効率的に得られます。
また、昨今はクルーズコントロールがついていれば、坂道などでも車速を一定にすることができるため、存在価値がさらに薄くなりつつあります。
「ハンドルから手を放さずにシフトダウンができること」 「使い方次第では燃費が向上する」など、パドルシフトに、機能的価値がないわけではなく、使えば楽しいし、毎日使って染みついていて運転感覚の一部になっている方もおり、その気持ちもわかります。しかしながら「なくてもそれほど問題ではない」装備ではあります。
また、パドルシフトを装備することで、一定の開発工数や部品代がかかっており、それが車両本体価格に上乗せされていることも確か。新車として納車された直後は使いまくっていても、しばらくしたら使わなくなってもう3年……というケースも珍しくないのでは。いや重ねていうと、便利に楽しく使っている方も多いというのもわかるのですが。それでもなぜ、自動車メーカーはパドルシフトをつけているのでしょうか。
コメント
コメントの使い方