前席には当たり前にある、シートバックのリクライニング機能。3列シートのミニバンであれば、2列目にもリクライニング機能があるが、2列シートのSUVとなると、リクライニング機能を持つクルマはあまり見られず、あったとしても、2段階、それもほんのちょっと角度を変えられる程度だ。
セダンと比べて、ラゲッジスペース側が空いているSUVであれば、もう少し調整幅を持たせられるようにも感じる。快適性向上のためには、もっと搭載するクルマが多くてもおかしくない後席のリクライニング機能。新型車であっても搭載するクルマが少ないのは、なぜだろうか? 考察していきたい。
文/吉川賢一
写真/TOYOTA、NISSAN、MAZDA
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■ピラー固定タイプは、調節機構がレイアウトできない
セダンタイプを除くと、クルマの2列目シートの構造は、大きく2つに分けられる。ひとつは、フロア面(床)にシートフレームを固定する自立タイプ。キャプテンシートのような左右独立式シートのほか、ベンチシートも、床に固定されているシートは自立式だ。そしてもうひとつが、ピラーなどの側面に設けたフックやスリッド(溝)にシートバックを留めるタイプだ。
自立タイプは、3列目シートを持つミニバンや大型SUVに多い。トヨタ『アルファード』『ノア/ヴォクシー』や、日産『エルグランド』『セレナ』、ホンダ『オデッセイ』、三菱『デリカD:5』、マツダ『CX-8』などがそのタイプだ。これらのクルマの2列目シートには、リクライニング機能が備わっていることが多い。
なぜなら、文字どおり「自立式」であるため、シートクッションとシートバックの間との付け根でシートバックの倒れこみをどこかで止める機構を持たなくてはならない。その機構に何段階か(もしくは無段階に)角度を調節できるような仕組みをつけておけばいいだけなので、レイアウト的にもコスト的にもそれほどかさばることなく、装備できるからだ。
一方、ピラー固定タイプの場合、シートバックの倒れこみ角度は、シートバックをクルマの側面(壁面)に固定することで決めることができる。そのため、シートクッションとシートバックとの間に、自立式のような機構を持つ必要がない。
また、リクライニング機構はそれなりに大きくかさばるため、2列シートSUVの後席のように、後輪タイヤの直前にシートがある場合だと、クッションの厚みを減らさないと、そもそもレイアウトができないのだ。仮に、無理やりリクライニング機構を設置すれば、シートに不自然なでっぱりが現れ、座り心地に影響が出てしまうことになる。
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