毎月発表される販売統計を見ると、日本国内で新車として売られる小型/普通乗用車の内、ハイブリッドが38~40%を占めているのがわかる。モーター駆動を併用しないNA(自然吸気)ガソリンエンジン車の比率は50%少々だ。
最近では新型ヴェゼルの受注内訳を見ると、93%がハイブリッド、ヤリスクロスも7、8割がハイブリッドと、ハイブリッドの人気が高まっているのがわかる。
しかし、本当にハイブリッドはすべての面においてガソリンエンジンよりもいいのか? ハイブリッドに不利な場面はないのか、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ
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ハイブリッドに不利な場面はあるのか?
ハイブリッド比率をメーカー別に見ると、日産はハイブリッド比率が80%前後と高い。登録台数の多い現行ノートはe-POWERのみだ。
セレナでは、e-POWERだけでなく、Sハイブリッド(スマートシンプルハイブリッド/機能はマイルドハイブリッド)もハイブリッドとしてカウントされる。ホンダのハイブリッド比率も60~70%と高い。
逆にトヨタは、ハイブリッドの印象が強いメーカーだが、販売比率は35~40%に留まる。ヤリスやアルファードは、NAエンジンの比率が高く、ライズはハイブリッドを用意しない。
その一方でハイブリッド専用車になるプリウスやアクアの売れ行きは下降傾向だから、ハイブリッド比率も下がってきた。
それでも小型/普通乗用車全体で見れば、約40%がハイブリッドだ。前述の通りノートやキックスはハイブリッドのみで、ヴェゼルもNAエンジンが1グレードに留まるから、ハイブリッド比率は93%に達した。
今後は2030年度燃費基準に基づくハードルの高い燃費規制も実施され、モーター駆動を採用する車種の販売比率はさらに高まる。まさにハイブリッド全盛だ。
そこで、ハイブリッドの欠点について考えてみたい。ハイブリッドを購入する時には、欠点も考慮して、満足度の高い車種を選びたい。
燃費はガソリンよりもすべてハイブリッドのほうがいいのか?
まずは肝心の燃費性能を考える。基本的にハイブリッドは燃費が優れているが、すべての場面でNAエンジンを上まわるとは限らない。
例えばヤリスハイブリッドのWLTCモード燃費は35.4~36km/L(2WD)だ。日本で購入可能な乗用車では最良の数値だが、WLTCの走行モード別に見ると、有利と不利が分かれる。
ヤリスにNAの1.5Lエンジンを搭載する1.5Xは21.6km/Lだ。ハイブリッドXの燃費数値は36km/Lだから、1.5Xの167%に達するが、WLTCの高速道路モードでは差が縮まる。
ハイブリッドXは33.4km/Lに下がり、1.5Xは24.3km/Lに向上するから、前述の比率は137%に下がる。
ヴェゼルの場合はどうか。WLTCモード燃費は、ハイブリッドのe:HEV・Xは25km/L(2WD)、NAエンジンのGは17km/Lだ。e:HEVの燃費数値はNAエンジンの147%になる。
しかし高速道路モードは、e:HEV・Xが23.9km/L、NAエンジンのGは19.2km/Lだから124%に留まる。
さらにフォレスターの場合、水平対向4気筒2Lによるハイブリッドのe-BOXERは、WLTCモード燃費が14km/Lだ。
1.8Lターボは13.6km/Lになる(駆動方式は4WDのみ)。それがWLTCの郊外モード燃費になると、e-BOXERは14.2km/L、ターボは14.3km/Lだから、ハイブリッドの燃費が悪くなってしまう。
ちなみにフォレスターのターボは、最高出力が177ps/5200~560rpm、最大トルクは3LのNAエンジンに匹敵する30.6kgm/1600~3600rpmだ。
e-BOXERよりもパワフルだから、動力性能+燃費というエンジンの総合力から判断すると、ターボの実力はハイブリッドを上まわる。
以上のようにハイブリッドの燃費効率は、低速走行、減速、停止を繰り返す市街地では優れた効果を発揮する。
逆にアクセル開度を一定に保ちながら、高速道路やバイパスを巡航するような用途ではメリットが薄れやすい。
その結果、渋滞や低速走行の多い日本では、前述の通り新車として売られた小型/普通乗用車の約40%がハイブリッドになった。
レクサスは2021年4月に電動車の世界販売累計が202万1000台に達したと発表したが、この内訳を見ると、日本の販売比率が20%に達する。NAエンジンを含めたレクサス全体の日本比率は7%だから、国内市場ではハイブリッドが海外よりも積極的に売られている。
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