いまだに多くのファンを持つロータリーエンジンは、1967年に初代マツダコスモスポーツに搭載されて市販がスタート。
マツダの大きな特徴の一つだったが、残念ながら2017年に最後のロータリーエンジン搭載車のRX-8の生産が終了してしまった。
今回はそんなロータリーエンジンの歴史を3回に分けて振り返ろう。
文/鈴木直也、写真/Mazda、ベストカー編集部
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■苦節7年、世界初の市販ロータリーエンジンを開発
マツダが創立100周年を記念して編纂した「MAZDA 100 EPISODES」という冊子によると、ロータリーエンジン(以下REと略)の技術ライセンス導入について、マツダがNSU・バンケルと仮契約を交わしたのは1960年10月。当時の松田恒次社長みずからドイツへ出向いて交渉した結果だった。
マツダREの歴史はそこから始まるわけだが、最初の市販車となる初代コスモスポーツ(L10A型)の販売開始は1967年5月。開発に7年近い時間を要してのデビューだった。
その過程でもっとも技術陣を悩ませたのが、後に「悪魔の爪痕」として有名になる“チャターマーク”だ。
ローターの回転と燃焼圧の変動でアペックスシールが振動し、ローターハウジング内面に波状の摩耗が発生するこのトラブルは、REのガスシールの難しさを象徴するエピソードとして、その後も長く改良が続くテーマとなる。
そんな技術的困難を乗り越えて、マツダにとって初の市販REとなったのが10A型である。単室491ccの2ローターで110ps/7000rpm、13.3kgm/3300rpmというスペック。量産2ローターとしては本家NSUに先んじて世界初となる快挙だった。
■スポーツカーに搭載し量産しながら開発を継続
ただし、初代コスモの10A型REは完成度という点ではまだまだ荒削りなところが残されていた。
スペック的には当時のレシプロ2Lを凌ぐ実力といってもいいが、そのかわり低速トルクは驚くほど貧弱。トップエンドは7000rpm以上まで軽々まわるけれど、本当に使い物になるのは4000rpmを超えてから。乗用車にはとても使えそうもない、きわめてピーキーなトルク特性を備えていたのだ。
初代コスモは後期型(1968年7月デビューのL10B)でエンジンにも手が入り、カタログスペックは128ps/7000rpm、14.2kgm/5000rpmへと向上する。
最大トルク発生回転数が上にシフトしているから、パワーアップでさらにピーキーになったかと思いきや、実際に乗ってみるとむしろこの後期型エンジンの方がドライバビリティも良好。
最初のRE搭載車が初代コスモのような小量生産スポーツカーになったのは、量産しながら開発を継続するという意味あいもあったのではないかと思うが、REがなんとかまともに走るようになったのが、この初代コスモ後期型(L10B)からだったといえる。
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