マツダSUVの切り札、CX-30は2019年10月の発売から1年半以上が経過したが、期待の高さもあってか販売はやや伸び悩んでいる印象だ。
というのも、CX-30は全幅1.8m未満で全高も立体駐車場に入れる1550mmと適度なサイズ感が身上。より小型なCX-3に対して室内空間も広く、一方でCX-5では「大きすぎる」と考えるユーザーにとっては最適で、稼ぎ頭になることが期待されていた。
そんなCX-30の販売台数は、直近の2021年上半期累計で1万1661台と、CX-5より少ない。なぜCX-30の売れ行きは伸び悩んでいるか?
文/渡辺陽一郎
写真/奥隅圭之、MAZDA
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一層人気を高めるコンパクトSUV
今はコンパクトSUVの人気が高い。トヨタのヤリスクロスは、2021年上半期に月平均で9193台を登録した(ヤリスとGRヤリスを除く)。ライズも7994台と多い。
ホンダのヴェゼルは2021年4月に発売され、鈴鹿製作所の生産規模などの関係で納期が6か月から1年と長いが、 2021年5月には4060台、6月には5692台を登録。日産のキックスはハイブリッドのe-POWERのみだから、登録台数は多くないが、2021年上半期の月平均は3532台であった。
これらのコンパクトSUVは、混雑した街中でも運転しやすく、価格は割安で燃費も良い。その一方で4名乗車が可能で荷物も積みやすい。外観は大径タイヤの装着、少しワイドに張り出したフェンダーなどによって存在感を強めている。
つまりコンパクトSUVは、外観のカッコ良さ、運転のしやすさ、4名乗車や荷物の積載といった実用性、割安な価格、低燃費などを両立させて人気のカテゴリーになった。
身内での立ち位置も微妙? なぜCX-30は伸び悩むのか
ただし、コンパクトSUVのすべてが好調に売られるわけではない。CX-30の登録台数は、2021年上半期の月平均が1943台だ。
同じマツダが手掛けるサイズの大きなCX-5は2077台、最上級のCX-8でも1827台だから、CX-30はコンパクトSUVなのに売れ行きが伸び悩む。
なぜCX-30は低調なのか。販売店に尋ねると以下のように返答された。
「マツダには、CX-30のほかに、コンパクトSUVとしてCX-3とMX-30があり、ミドルサイズにはCX-5も用意される。SUVの車種が多いため、需要が分散されやすい。また、SUVにはファミリーのお客様が多い。その場合、CX-30よりもCX-5の方が、後席と荷室が広くて使いやすい」
CX-5はボディがひとまわり大きく、全長はCX-30よりも150mm長い。そのために車内も広く、身長170cmの大人4名が乗車した場合、CX-30の後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ少々だが、CX-5は2つぶんを確保する。荷室の奥行寸法(荷室長)は、後席を使った状態で、CX-30は約800mm、CX-5は1000mm近くに達する。
その一方で、CX-30とCX-5の価格差は以外に小さい。直列4気筒2Lガソリンエンジンを搭載する「20Sプロアクティブ」の2WD同士で価格を比べると、CX-30は261万2500円、CX-5は290万9500円だ。
CX-5であれば、約29万円の上乗せで広い居住空間と荷室が得られ、ワイドなボディに4輪独立式サスペンションを組み合わせるから直進安定性も優れている。
乗り心地も向上する。狭い道での運転のしやすさなどに不満がなければ、SUVの中心となるファミリー層は、CX-30よりもCX-5を選ぶだろう。
またマツダにはさらにコンパクトなCX-3も用意される。販売不振に陥ってガソリンエンジンを低価格で加え、最も安価な1.5Lの「15S」は189万2000円だ。運転支援機能などの機能を充実させた「15Sアーバンドレッサー」が227万1500円になる。価格の安いCX-3が用意されることも、CX-30の販売面では不利な要素になっている。
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