我々がクルマ好きの子供だった時代、ターボというのは「よく分からないけどクルマが速くなる装備」だった。ターボ搭載車というだけでなんだか高性能な気がしたものだ。
それがツインターボともなると、さらに気持ちが高まった。ターボでもスゴいのに、それが二つも付いてるの!?
今回は、語感だけで興奮できるツインターボを、クルマ好きの少年からクルマ好きの大人へと成長を遂げた(?)清水草一氏が解説する。
文/清水草一、写真/NISSAN、TOYOTA、BMW、ベストカー編集部
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■ツインターボ……それは甘美で危険な語感
ツインターボ。
実に語感が強いではないか。
「ターボ」というだけで強いのに、それが「ツイン」なのだ。もちろん「トリプル」や「クワッド」ならもっと強いけど、それはあまりもレアだし、ちょっと現実的じゃない。ターボ×2のツインターボには、現実味のある最強のブースト効果、というイメージが漂う。
90年代、「ツインターボ」という名の競走馬がいて、ペース配分などまったく考えない大逃げ専門の馬だったという。勝つときは最初から最後まで先頭、負けるときも最初は先頭、そしてビリに。
自動車エンジン用のツインターボは、高効率・高出力を狙ったシステムだから、大逃げ馬との共通点はあまりないが、語感は間違いなくソレだ。後先なく突っ走ってはかなく散るイメージである。
実際のツインターボは、ターボラグを縮小してレスポンスを高めるのが主な目的。ターボエンジンは、パワーを出そうとするほどタービンがでっかくなり、そのためレスポンスが悪化して、アクセルを踏み込んでからパワーが出るまでのラグが大きくなる。いわゆるドッカンターボだ。
かといって、タービンを小さくすると過給圧が小さくなり、パワーが出ない。その解決策として、小さなタービンを2個装着し、レスポンスとパワーを両立させたのがツインターボなのだ。
国産車初のツインターボは、84年に登場したトヨタの「マークII/クレスタ/チェイサー」三兄弟で、2リッターのツインターボ(1G-GTEU)だった。
それまでの国産ターボは、すべてシングルターボ。3000rpmを超えないとパワーが出なかったが、1G-GTEU(185馬力)は、もっと低い回転からターボが効いて、胸のすくような加速が味わえた記憶がある。それはまるで大排気量エンジン! 初代ソアラの2.8リットル自然吸気(170馬力)にも遜色なかった。
ただ、シングルターボの生み出すドッカンパワーの刺激も捨てがたいものがあった。シングルターボは、ターボラグが大きい分、ターボが効き始めた時の「うひょー!」という感動が大きいからだ。性能のツインターボ、感性のシングルターボとでも言おうか。
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