■バブル期最高のハイパフォーマンスカーはツインターボによって実現された
私が初めて買ったツインターボ車は、3リッターV6ツインターボのVG30DETTを搭載した、Z32型フェアレディZだった。
当時の私は、ツインターボよりなにより、280馬力というハイパワーに大コーフンし、ツインターボであることは、どうでもよかった記憶がある。
280馬力に大コーフンしたのもつかの間、ほぼ同時期、生まれて初めてフェラーリを体験し、その悪魔的なフィーリングの前に、すべてが吹っ飛んだ。加えて、32Z登場後間もなく、2.6リッター直6のRB26DETTを搭載したR32スカイラインGT-Rが登場する。
こちらはVG30DETTよりも、回転フィールもパワーフィールも官能的で、まさに無敵の重戦車。テスタロッサの12気筒の前に、ZのV6ツインターボは木っ端微塵になったが(私見です)、GT-Rなら、少なくとも総合的な速さは上だし、フィーリングにも独特の味わいがあった。
R32GT-Rは、バブル期のジャパン・アズ・ナンバー1感を象徴する超高性能車。それはツインターボによって実現された!
ツインターボは、ターボがツインだからツインターボなわけだが、イタリア語だとビトゥルボとなる。デ・トマス時代のマセラティは、車名に「ビトゥルボ」を使い、ツインターボであることを誇示していた。
私は01年になって、2.8リッターV6 SOHCツインターボ(225馬力)を積んだマセラティ430を購入したが、これはツインターボ感が非常に薄いクルマだった。
すでにフェラーリなどハイパワー車をいろいろ知ってしまっていたこともあるが、とにかくあんまりパワーがない。しかもツインターボらしいレスポンスの良さもない。比較的ドッカンターボなのに5000rpmあたりでもうパワーが垂れる、まさに名ばかりのツインターボで、それはそれで没落貴族的でステキだった。
■登場間近な『究極のツインターボ』
20世紀中のツインターボの最高傑作は、RB26DETTで間違いない。が、21世紀に入った06年、ついにそれを上回る衝撃を与えるツインターボが現れた。BMW335i(E90系)に搭載された、3リッター直6直噴ツインターボ(N54B)だ。
とにかく、トルクの出がハンパじゃない。スペックは306馬力/400Nmだが、それをはるかに上回るパワーとトルクを感じさせ、しかも回転フィールもサウンドも最高に素晴らしかった。このN54Bエンジンは、あえてバルブトロニックを使わずに、古典的な快感にこだわっている。エンジン屋・BMWらしい傑作だ。
しかし、コストが高すぎたのだろう。このツインターボは、10年のマイナーチェンジで「ツインパワーターボ」という名の可変シングルターボに置き換えられた。スペックは変わらなかったが、フェラーリすら彷彿とさせた快感は失われた。
後年私は、中古でこのN54Bを搭載した335iカブリオレを買い、究極のツインターボを堪能した。
それは、低回転域からぐぐっとターボが効きつつ、ターボらしいパワーとトルクの盛り上がりがしっかりあり、しかもシルキー6の滑らかな回転フィールで、7000rpmまで突き抜けて乾いた快音を発するという、ツインターボの金字塔だ。
現在、ターボのフィーリングはあまりにも自然になり、シングルだろうがツインだろうが、ほとんどターボを感じさせなくなった。そんな中でもいろいろな名機は存在するが、多くが1千万円オーバーで、おいそれとは手に入らない。
また、ここまで進化すると、RB26DETTやN54Bのような古き良きツインターボに、深い味わいを感じずにはいられない面もある。
が、日本には、最後の、そして究極のツインターボになりうるブツが控えている。次期フェアレディZに搭載される、3リッターV6ツインターボだ。
ベースはスカイライン400RのVR30DDTT(408馬力)。400Rのエンジンですでに、世界の現行ツインターボの中で指折りの官能性を誇っている。
パワーもトルクもレスポンスもいいのに、ドッカーンという暴力的な盛り上がりがある。あれをベースにブラッシュアップすれば、1千万円以下のツインターボ車史上、最高のユニットになる可能性もある。期待して待とう!
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