ダイナにコースター、そしてJPNタクシーなど、トヨタには法人向け車両が数多くある。これらのクルマは、ホームページのラインナップ一覧で「ビジネスカー」と表記されており、個人客から少し距離を取っている印象を受けるだろう。
しかし、ビジネスカーも個人購入ができるクルマの一つだ。ディーラーショールームで、商談を見る機会は少ないが、ラインナップに載っているクルマであれば、どれでもトヨタ販売店で購入することができる。
そこで今回は、個人がディーラーでビジネスカーを購入する際の、ルールや注意点などを、元自動車ディーラー営業マンが解説していく。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA
【画像ギャラリー】ビジネスカーを個人所有できるの!? JPNタクシーを自家用車として購入する際の注意点
■JPNタクシーは、マイカーとして使われている?
JPNタクシーのベースは、大人気コンパクトミニバンのシエンタであるが、乗用車のシエンタよりも高い耐久性が求められるため、大きく手が加えられている。
タイヤサイズやリヤサスペンションを変更し、パワートレインには新開発のLPGハイブリッドシステムが採用された。
ボディサイズは全長4,400mm×全幅1,695mm×全高1,750mmだ。シエンタに比べて全長が165mm長く、全高は75mm高い。ボディサイズと耐久性が、シエンタよりも高められたJPNタクシーを、マイカーとして使いたいと考える方もいるのではないだろうか。
実際にトヨタ販売店で聞いてみると、JPNタクシーを個人で購入し、マイカーとして使っているケースは、ごく少数ではあるが存在するという。その台数は、自家用のコースターと同じ程度らしい。
ただ、筆者の経験上、ビジネスカーを個人購入するのは、一筋縄ではいかない。実際に、どのような問題が発生するのか、紹介していく。
■納車できる、使用できる環境が必要
JPNタクシー、コースターやダイナを販売する際に、ディーラー側が確認することは、「契約後に、問題なく納車することができ、正常に使用できる環境があるか」という点だ。
例えば、コースターやダイナの場合、ナンバー取得に必要な車庫証明を問題なく取れるのか、つまり保管場所が確保できるのかが、大きな問題となる。全長約7mの巨大なクルマを、どこで保管するのか、契約締結前に必ず確認されるはずだ。
また、高額で需要の少ないクルマであることから、注文後のキャンセルは大問題だ。コースターで約800万円~1000万円、ダイナでは300万円~600万円の車両本体価格である。場合によっては、契約時に車両金額の1割から2割程度の、先払いをお願いされることがあるだろう。
JPNタクシーの場合はどうだろうか。車両本体価格は上級グレードの匠で356万4000円だ。しかし、シエンタのハイブリッドG Cueroが258万円であるため、高額なイメージは避けられない。こちらも、先払いの対象となる可能性は高くなる。
また、JPNタクシーの場合は、使用燃料がLPGという点が、大きな障壁となる。
ガソリンスタンドに比べて、数が少ないLPGスタンドは、法人契約やタクシー専用に開放しているものが多数を占める。つまり、スタンドが少なく、その中でも個人向けに販売を行っている場所はごく少数だ。少なくとも使用の本拠地とする市町村に、個人用LPGスタンドが確認できなければ、販売を見送る可能性もある。
販売店としては、注文されてクルマが来ても、ナンバーを付けて登録しなければ納車(引き渡し)することはできない。また、納車後に「LPGのクルマだとは知らなかった」とクレームを出されても困るので、問題なく使用できる環境が整っているのか、慎重に精査して販売しているのだ。
コメント
コメントの使い方