日産のコンパクトカー、ノートの上級モデルとして8月17日に発売されたノートオーラ。コンパクトクラスながら豪華な装備が与えられた小さな高級車のようなモデルなのが特徴だ。
コンパクトカーなのに3ナンバーサイズで上級モデルも意識したノートオーラは好調に売れて、近年新型車が少なかったことで販売が苦戦している日産の救世主になりそうか?
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーWeb編集部、ベストカー編集部
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■国内市場へ目を向けるようになったからこそ生まれた「オーラ」
2011年以降の日産は、国内で発売する新型車の車種数を大幅に減らした。2008年のリーマンショックを切っ掛けに、景気が世界的に悪化して、市場の拡大が期待される中国や新興国を重視するようになったからだ。
日本は少子高齢化が進む縮小傾向の市場と判断され、新型車の発売は1~2年に1車種となった。
ところがその後、カルロスゴーン元会長の逮捕もあり、国内市場を見直す動きが日産内部に見られるようになった。
元会長の逮捕を切っ掛けに、国内市場へ目を向けるようになった現実こそ、今の日産が抱える重大な問題点ともいえるが、日本のユーザーにとって流れが変わったことは歓迎される。
その効果のひとつがノートオーラの登場だ。2020年11月に現行ノートが発表され(納車を伴う発売は同年12月)、2021年6月には上級シリーズのノートオーラが発表されて8月17日に発売されている。さらに同じ8月17日には、スポーティなノートオーラNISMOも発表された。
果たしてノートオーラは、好調に売れて日産の救世主になるのか。この点を考えてみたい。
■さまざまな日産車ユーザーの受け皿に!
まず日産の思惑として、ノートオーラは好調に売れないと困る。日産の2021年1~7月の国内販売台数は、トヨタ/スズキ/ダイハツ/ホンダに次ぐ5位であった。
2007年頃までの日産は安定的に国内販売の2位だったが、前述のとおり近年は新型車の投入が減り、発売から長期間が経過した車種も増えて販売ランキング順位が下がった。日産としてはこのテコ入れを図りたい。
ただし日産では国内向けの車種に費やせる開発予算が限られる。そこで日本で軽自動車と並んで売れ筋カテゴリーになるコンパクトカーに注目した。まずは国内向けとして現行ノートを発売し、さらに低コストで開発できる派生車種のノートオーラも投入したわけだ。
しかもノートオーラはノートの上級に位置するため、さらに上級車種からのダウンサイジングを含めて、さまざまな日産車ユーザーに推奨できる。
この点について、販売店は以下のように説明した。「ノートオーラは、ノート以上に内外装を上質にして装備も充実させたから、セレナやティアナなどの上級車種から乗り替えるお客様も多い。またキューブ、ティーダ、ブルーバードシルフィのお客様も購入されている」。
販売店のコメントには、日産が廃止した人気車の名前が多く登場した。特にキューブとティーダは、内装が上質なリラックスできる雰囲気のコンパクトカーで、かつては高い人気を誇った。
2代目キューブは2003年に1カ月平均で1万1600台、ティーダは2005年に8200台を登録して、販売ランキングの上位に入っている。その後も堅調に売られたが、2012年以降に次々と廃止された。
ティーダについては、2012年に発売された先代ノートに上級のメダリストを設定して、需要を引き継ごうと考えたが、先代ノートメダリストは質感の低さも散見された。ティーダからの乗り替えは少数に留まり、販売店からは「ノートはティーダの代わりにはならない」という意見が聞かれた。
このように今の日産には、車種の廃止によって行き場を失った乗り替え需要が多い。日産としては現行ノートの質感を高め、さらに上級のノートオーラも加えて、廃止した車種からの乗り替え需要を効率よく吸収しようと考えている。
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