最近、ヒットしているクルマといえば、かなりの確率で丸目のクルマが多いことに気付く。スズキはハスラー、ジムニー、スペーシア、アルトラパン、そして9月10日に発売されたワゴンRスマイルも楕円に近いが丸目のヘッドランプを採用している。
ホンダもN-WGNやN-ONE、N-VAN、ホンダe、そしてベストセラー車のN-BOXもヘッドライトカバーは四角いが点灯するLEDヘッドランプ部分は丸目だ。
世界的に人気のSUVにおいてもベンツGクラス、ジープラングラーも丸目だし、最近フルモデルチェンジしたランドローバーディフェンダーも円形の上の部分がカットされてはいるものの、丸目。歴史の長いポルシェ911やMINI、フィアット500もそうだ。
ということで、丸目のクルマは大ヒットする、という法則があるのか、モータージャーナリストの清水草一氏が斬る!
文/清水草一
写真/スズキ、ダイハツ、ベストカー編集部、ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】世界中の個性際立つ丸目のクルマを写真でチェック!!
■丸目の軽自動車
ワゴンRに、まさかのスライドドアモデルが追加された。それがワゴンRスマイルだ。まさかの、と書いたが、実はこれは必然だった。なぜなら、ライバルであるダイハツのムーヴキャンバスの売れ行きが地道に伸びていたからだ。
軽自動車業界では、ヒットしたコンセプトは必ず「ほぼそのまんま」のライバルが登場する。スズキが放っておくはずがなかったのだ。
ワゴンRスマイルのデザインテイストは、ムーヴキャンバスに近い、癒し系のホンワカトールワゴン。ヘッドライトは楕円形で、ハスラーのようなメッキ製の縁がぐるりと囲むレトロなイメージだ。
つまり、ハスラーのスライドドア付きトールワゴンとも言うべき存在。ヘッドライト形状は楕円だが、「丸目」の一種だといえる。
ムーヴキャンバスのヘッドライトは、内側だけが丸い「靴べら型」だが、内側のライト部分は円形。つまりこれも「丸目」の仲間だ。
クルマを丸目にするだけで、レトロでホンワカした印象になる。それはチョーチンとかぼんぼりのように、ダイレクトに「なんとなく昔」を想起させるし、たくらみのない、素朴で純情っぽいデザインに見える。
私は以前から、ムーヴキャンバスのデザインに惹かれていた。キャンバスはもともと、女性向けに企画されたクルマだが、キャンバスには、性別を超えたどうにもならないかわいさがある。
ワーゲンバスに似た雰囲気は、ただかわいいだけではない機能性も感じさせる。ムーヴより25ミリしか高くない全高は見た目のバランスがよく、真後ろから見るとほとんど真四角なので、意外と低重心に見える。安定感が高そうなプロポーションが、クルマ好きのココロに刺さる面もある。
一方のワゴンRスマイルは、キャンバスよりは40ミリ全高が高く、ハイトワゴンに近いトールワゴンだが、スペーシアに比べれば明らかに重心が低い。そして見た目は、キャンバスよりユニセックス寄りで、より幅広い層に受け入れられそうだ。
個人的な感想としては、抱きしめたくなるようなかわいさでは、依然キャンバスの圧勝だ。スマイルの丸目は、太いメッキ縁に囲まれて、牛乳瓶の底のような秀才メガネに見えるのが弱点だろう。
しかし秀才メガネも、カトチャン(加藤茶)みたいなヒョーキンさはあり、「スマイルもなかなかいいな」と思っている。このクルマ、本家ワゴンRを超えるヒットになる可能性が高い。
チョーチンやぼんぼり型の照明器具は、今でも一定のシェアを保っている。それに比べると、クルマの丸目は非常に少数派だ。あまりにも少ないがゆえに、素朴ながら印象は強烈。そのせいか、近年、増加傾向が見えてきた。
スズキの軽を見ると、丸目率の高さに驚かされる。ハスラー、ジムニー、スペーシアギア、アルトラパン、そしてワゴンRスマイルと、5車種もある。
このうち最初に登場したのは、2014年のハスラーだった(ラパンは初代から一部が丸目で、2015年登場の現行モデルから本格的な丸目)。わずか7年間で5台にまで増えたのだから、ある意味スゴイ。
逆に丸目じゃないスズキの軽は、アルト、エブリィワゴン、スペーシア、ワゴンR、ワゴンRスティングレーと、同じく5車種。スズキの軽の半分が丸目になったわけだ。
現在、ヘッドライト形状の主流は異形のツリ目系。丸目はかなりの少数派だが、丸目のクルマは、それだけで存在感があり、平均すると売れ行きもいい。
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