平成の幕開けを飾った稀代の名車 Z32フェアレディZ

平成の幕開けを飾った稀代の名車 Z32フェアレディZ

 新型フェアレディZのスタイリングはなかなか鮮烈だった。原点回帰を思わせる情緒的なディテールとモダンの融合、そしてスポーツカーとしてのこだわり。日産がフェアレディZをいかに大切にしてきたかがひしひしと伝わってくるものだった。

 歴代Zの中でも、オジサン世代が「Zといえば」と問われて真っ先に挙げる一台は、1989年7月に発売された4代目フェアレディZ「Z32」であろう。単にスタイリング、メカニズムだけでは説明し尽くせないその魅力とは何か、紐解いていこう。

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN

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世界に向けたハイパフォーマンスと、バブルの華やかさをもって登場

 Z32が登場した1989年は、バブル絶頂期。そして、ユーノス(マツダ)・ロードスターやR32スカイラインGT-R、セルシオ、レガシィなど、伝説的な名車が多く誕生した、日本車の「アタリ年」でもある。

 日本車は、1970年代から1980年代にかけて、特に北米で急激に販売台数を伸ばし始める。オイルショックや環境汚染が問題視され始めたことで、燃費がよくて壊れにくい日本車が、世界的に評価され始めたことが要因だ。

 1980年には、日本の自動車生産台数が世界一に。そのため、1980年代は、世界的な市場を意識して開発されたモデルが多く、Z32のほか、前出のモデルたちの登場はその集大成といった感じであった。

1989年登場の4代目、Z32型。フェアレディZらしいスタイリングを保ちながら、キャビンフォワードで機能美とモダンさを追求。リッチでプレステージ性の高いデザインが魅力的だ
1989年登場の4代目、Z32型。フェアレディZらしいスタイリングを保ちながら、キャビンフォワードで機能美とモダンさを追求。リッチでプレステージ性の高いデザインが魅力的だ

 フェアレディZは、Z32の前モデルであるZ31で、それまでの直6エンジンからV6エンジン中心に変更、これによって、「ハイパフォーマンスカー」としての存在感をより強固なものにしていた。Z32でも、それは引き継がれており、世界で通用するハイパフォーマンスに加えて、誰もが憧れるデザインと、バブル景気の勢いと華やかさを併せ持って登場した。

Z32の先代モデルとなるZ31型フェアレディZ。直6エンジンからV6エンジン中心のラインアップに変え、世界的な競争力を高めたモデルとなった
Z32の先代モデルとなるZ31型フェアレディZ。直6エンジンからV6エンジン中心のラインアップに変え、世界的な競争力を高めたモデルとなった

次ページは : Zのアイデンティティと、モダンなスポーツカーフォルムが融合

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