アメリカが虎視眈々と狙っている!? 『25年ルール』が適用される日本車たち

アメリカが虎視眈々と狙っている!? 『25年ルール』が適用される日本車たち

 1990年代は日本車のスポーツモデルが多く発売された時期で、また売れ行きも好調だったこともあり、その後は手軽に購入できる中古スポーツとして市場に出回った。

 しかし、そんな中古スポーツが高騰している。特に話題になるのは日産スカイラインGT-R のR32、R33、R34型だ。

 その背景にあるのは北米の法規と世界的な日本製スポーツ車の人気だ。

文/藤田竜太、写真/TOYOTA、NISSAN、MAZDA、ベストカー編集部

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■アメリカのクラシックカー登録制度『25年ルール』

2016年、アメリカのオークションで8万2500ドル(1ドル=122円換算で約1006万円)で落札されたR32型GT-R
2016年、アメリカのオークションで8万2500ドル(1ドル=122円換算で約1006万円)で落札されたR32型GT-R

 かつてはクルマの寿命は10年10万kmというのがひとつの目安だったが、1990年代の国産スポーツに限っていえば、10年どころか、25年以上経過している個体が人気で、中古車価格が高騰する傾向にある。

 この25年以上前のクルマの中古車価格高騰を支えているのが、アメリカのいわゆる「25年ルール」。

 アメリカでは、原則として右ハンドルのクルマの通行は認められていないが、初年度登録から25年以上経過したクルマであれば、アメリカ合衆国運輸省(NHTSA)が右ハンドル車の輸入・走行を認め、関税や排ガス規制までも対象外とするクラシックカー登録制度があり、これが「25年ルール」といわれている。

 この「25年ルール」が注目されるようになったのは、2016年にアメリカのRMオークションで、1989年型=初期モデルの日産スカイラインGT-R(R32型)が、8万2500ドル(1ドル=122円換算で1006万5000円)で落札されたというニュースが入ってきた頃から。

 このR32GT-Rを皮切りに、北米に輸出されていなかった国産スポーツが、25年を過ぎるとどんどん値上がりする流れになってきた。

■日本のネオクラスポーツがアメリカで愛される理由

R34型GT-Rなどのジャパニーズスポーツカーがフィーチャーされたゲームや映画の影響も大きい
R34型GT-Rなどのジャパニーズスポーツカーがフィーチャーされたゲームや映画の影響も大きい

 ではなぜ、アメリカで25年も経過しているネオクラシックの国産スポーツが人気なのか。

 考えられる主な理由は下記の5つ。

【1】ゲームの影響

 プレイステーションのドライビングシミュレーションゲームソフトソフト、「GT(グランツーリスモ)」シリーズの大ヒットで、スカイラインGT-Rをはじめとする1990年代の国産スポーツのパフォーマンスを知り、自分でも実車を所有したい、運転してみたいという海外のスポーツカーファンが増えたため。

【2】映画の影響

 カーアクション映画「ワイルドスピード(原題:Fast & Furious)」シリーズに、国産スポーツベースのカスタムカー、チューニングカーが登場し、スクリーンで大活躍したというのも大きい。この映画のヒットに合せ、JDMがブームになった。

 JDMとはJapanese Domestic Market(日本の国内市場)の略で、アメリカで日本車をチューニングする際、日本製のパーツを使ってチューニングすることを意味している。

 このJDMチューンでは、右ハンドル仕様をベースにするのがカッコいいとされ、そういう意味でも日本仕様の右ハンドルのクルマの人気が高まっている。

 例えば、トヨタの80スープラなどは、北米トヨタで左ハンドル仕様が正規に販売されていたにもかかわらず、2018年に初期型が25年ルールをクリアすると、日本の中古車が輸出され、高値で取引されるケースが増えてきた。

映画「ワイルドスピード(原題:Fast & Furious)」シリーズによって80スープラなどの国産スポーツがブームとなった
映画「ワイルドスピード(原題:Fast & Furious)」シリーズによって80スープラなどの国産スポーツがブームとなった

【3】YouTubeの影響

 もうひとつ、YouTubeなどの動画サイトの影響も見逃せない。1990年代は国産スポーツの全盛期なので、新車比較テストからチューニングカーのタイムアタック、グループAや全日本GT選手権といったモータースポーツまで、この時代のクルマたちの熱い走りを、ネットでいくらでも見ることができる。

 インターネットなら国境は関係ないので、世界中のクルマ好きがこれらの動画を視聴し、1990年代国産スポーツに興味を持つようになってきた。

【4】賃金の差

 1990年代の国産車が優秀で壊れないというのはたしかだが、それでも25年も経過すれば、エンジン本体、ミッション、シャシー、電気系その他がいろいろ順番に壊れてくる。そのため維持費もなかなか大変なのだが、日本とアメリカでは経済的な余裕が違う。

 OECD(経済協力開発機構)加盟諸国の統計で、主要13カ国の過去25年間の名目賃金上昇率を見ると日本だけがマイナス4.54%で、マイナス成長となっている(1994年と2018年の比較)。

 ちなみにアメリカやイギリスは、この間、約100%の上昇! この所得の差が、日本から安い中古車を買って、イジって直して遊ぼう、という発想につながっているのは間違いない。

【5】旧車への増税の影響

 日本では、平成27年5月から新車登録後13年を経過したクルマには、より重い自動車税を課す「自動車税のグリーン化特例」がはじまった。

 ヨーロッパでは、スイスの「コレクターズナンバー」などを筆頭に、ドイツ、イギリス、イタリア、フランスなどで、ヒストリックカーの自動車税の優遇や、自動車保険も減額が設けられているのに、日本では旧車を維持する負担は大きい。

 旧車優遇措置がある国なら、25年超のクルマも所有しやすく、新たに購入しようという気持ちにもなりやすい。この日本と海外の旧車に対する税制の差も、国産スポーツが海外に流出する原因のひとつになっているはず。

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