どちらが早い? 何が違う? なぜ高速道路に右ルートと左ルートがあるのか

どちらが早い? 何が違う? なぜ高速道路に右ルートと左ルートがあるのか

 仕事の移動やドライブなどで東名高速や中央道を頻繁に走行する人なら知っていると思うが、いくつかの高速道路には、右ルートと左ルートに分かれている箇所が存在する。しかし、なぜわざわざ分かれたルートを採用したのかについて、知る人は少ない。

 地形的な理由なのか、はたまた構造上の問題なのか……。ルートによっては片側しか利用できないPAなどもあって、謎は深まるばかりだ。

 そこで、どんな経緯でこのような形になったのか、さらにどちらのルートを走ったほうが早く目的地に到着できるのかなど、自動車評論家にして、道路交通ジャーナリストの肩書も持つ清水草一氏に解説してもらった。

文/清水草一 写真/清水草一、フォッケウルフ

【画像ギャラリー】写真で見る右ルートと左ルートの詳細と違い


■ルートが分かれた各路線の事情と共通する理由

 東名高速や中央道には、下り線が右ルートと左ルートに分かれている区間がある。また、名神高速には上下線がそれぞれ右と左のルートに分かれている区間が存在する。具体的には、次の区間だ。

・東名下り線/大井松田~足柄SA間(19.5km)
・東名上り線/日本坂トンネル付近(3.6km)
・中央道下り線/上野原~大月間(4.6km+4.0kmの2か所)
・名神上下線/天王山・梶原トンネル付近(約8km)

 では、これらの区間は、いったいなぜルートが左右に分かれているのか? その理由は、「渋滞の名所だったから」である。

 これら3つの区間には、すべてトンネルがある。東名と中央道は山岳地帯でカーブも多い。それがいわゆる「サグ(くぼ地)」効果を生み、渋滞が猛烈に多発していた。その対策として、拡幅が検討されたが、トンネルは拡幅が極めて難しいので、別線を掘ることになる。

東名、中央、名神の左右ルートがある箇所は、すべて山岳地帯でトンネルがある
東名、中央、名神の左右ルートがある箇所は、すべて山岳地帯でトンネルがある

 そこで、東名・大井松田IC~御殿場IC間と中央道の場合は、3車線の上り線を新たに建設し、従来の上り線を下り線に転用。それによって、下り線が左ルート(元からの下り線)と右ルート(元の上り線)の合計4車線(2車線+2車線)になったという経緯だ。

 どちらも険しい山岳地帯を走っており、カーブがきつく事故も多発していたため、新設された上り線はカーブを緩くするため、元のルートとはやや離れて建設されている。

 東名・大井松田~御殿場間の拡幅が完成したのは1991年。中央道・上野原~大月間は2003年だった。日本坂トンネルは、3車線の下り線が新設されたため、左右に分かれるのは上り線になっている。こちらは1998年に完成している。

左右ルートに分かれた箇所は「サグ」となり、渋滞の名所だったという歴史があった
左右ルートに分かれた箇所は「サグ」となり、渋滞の名所だったという歴史があった

 一方、名神の天王山・梶原トンネルの場合は、東名や中央よりもさらに交通量が多く、ほぼ毎日渋滞が発生していたため、北側に新設された上り線も4車線とされた。ここはほぼ直線部で、平野部に突き出た天王山(羽柴秀吉と明智光秀の決戦が行われた地)をトンネルで貫いている形なので、上下線がほぼ並行している。

 4車線のトンネルは、直径が大きくなりすぎて不経済なため、新たなトンネル部も2車線+2車線に分離して建設された。その結果、上下線ともに左ルートと右ルートに分かれることになったのである。

 この天王山・梶原トンネル付近は、合計8車線が並行して走り、上下線がそれぞれ左右に分離するので、日本の高速道路の中では最も壮観だ。こちらの完成は1998年。世紀を挟んで、これら4区間が次々と完成したが、若い層はそれ以前を知らないため、「なぜ左右に分かれてるの?」と思うのも当然だろう。

 また、初めて通るときには、「えっ、どっちへ行けばいいんだ?」と、戸惑うことだろう。基本的にはどっちへ行ってもいいのだが、行先によっては、左ルートを選ぶ必要がある。

次ページは : ■左右ルートを選ぶ際の注意点

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