乗用車と同様、いやそれ以上に大型車にもEVや自動運転の近未来ビジョンが描かれている。”働くクルマ”であるトラックは、ドライバーが運転することがすなわち「仕事」であるため、最新技術の導入が急務であると同時に、デリケートな問題でもあるのだ。
そんななか、UDトラックスがドライバーの「仕事」をサポートする技術の販売を開始した。
※本稿は2021年8月のものです
文/末永高章(バスマガジン編集部) 写真/ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2021年9月10日号
■ステアリングに取り付けたモーターを電子制御してドライバーをサポート
ドライバーの運転環境を改善するためにUDトラックスが販売を開始したのは、同社フラッグシップの大型トラック「クオン」に快適で安定したステアリング感覚を実現する機能を持つ「UDアクティブステアリング」だ。
これは、従来の油圧式ステアリングギアの上部に新たに搭載した、電気モーターによる操舵支援機能。
電気モーターに付随する電子制御ユニット(ECU)が、1秒間に約2000回の頻度でさまざまなセンサーで運転環境を感知して、走行方向とドライバーの意図を判断し、あらゆる走行条件下において、ドライバーの運転操作をアクティブにサポートするもの。
後退・右左折・旋回などの低速走行時には軽い取り回しを実現し、速度が上がるにつれてステアリングの安定感を増強。
さらに積み荷や轍などの好ましくない路面状況、横風などにも流されてしまうことのない、安定したステアリングを実現し、ドライバーの疲労軽減と安全に寄与する。
このアクティブなサポート機能は、後の自動運転レベル2(特定条件下での自動運転/レーンキープ+オートクルーズなど一部乗用車で実現)にも転用することができる技術。
すでに2019年からクローズド・フィールドではあるが、無人トラックによるレベル4(特定条件下での完全自動運転)のオペレーションを稼動させている同社ならではのリアルな技術だ。
■運転の負担を軽くする各種機能が満載!
以下は具体的な特徴だ。
・低速走行の重量物輸送時でも軽い力で操舵できる
・高速走行時にスピードに応じてステアリングを適度な重さに制御、直進安定性を維持
・不整路走行時の路面の凹凸から受ける影響を自動補正
・横風発生時の直進走行を自動補正
・後退、右左折時の自然なハンドル戻り機能
いずれもドライバーの負担を大きく軽減するものだ。
自動運転とは違い、ドライバーの意思をクルマが読み取って作用する点が斬新でもあり、慣れた感覚から逸脱しない範囲でサポートしてくれるので、最新技術導入にありがちな違和感がない。
試乗はクオンのセミトレーラーで行った。新しいステアリングの体験ということで、メニューはパイロンスラロームと凹凸路、大きなUターンに続き車庫入れの順だ。
発進してまずステアリングを切る。巨大なトレーラーが指1本の力でスルーっと曲がり始め、ここでもかなりの驚きだが、同乗したUDトラックスの技術担当者からの指示で手をパッと離すと、ステアリングはニュートラル状態に向かってスルスルと戻った。
パイロンスラロームでは、左右交互にステアリングを切るわけだが、戻しの操作は不要。走行速度にも感応して、ちょうどイイ早さでステアリングが戻る。
これは車庫入れでも体感できたが、切ったステアリングが車庫入れゾーンを見ているかのように後退時にスルスルと戻る。カメラの存在を疑うほどの動きだった。
凹凸路では、通常なら車体がブレないように、ステアリングをしっかりホールドする場面だが、ここでも手離しの指示。挙動を感知して、凹凸によってガタガタと揺れる車体を見事に直進させた。
この[UDアクティブステアリング]は、クオン導入時にオーダーすれば、メーカーオプションとして搭載可能。価格は46万円(税別)。この技術に対するメーカーの自信が見えた。
トラックの「走る・曲がる・止まる」という基本動作を『ESCOT-VI(AMT)、UDアクティブステアリング、ディスクブレーキ』で高いレベルに引き上げ、ドライバーの運転環境を向上させることを、慢性的なドライバー不足に対する対策のひとつとしている。
【画像ギャラリー】ドライバーの安全と疲労軽減をサポート!! UDアクティブステアリングを搭載のクオンに試乗!!(10枚)画像ギャラリー
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