インターネットでさまざまな情報にアクセスできる現代では、新車の商談に関しても、日々いろいろな情報を目にする。また、ユーザー同士でクルマ商談時の武勇伝を語り合うことも多いだろう。
各所で、商談時の様々な技や話法を見聞きするなかには、元営業マンの筆者から見ると逆効果になっているなと思うものがしばしばある。今回は、効果的に見えるが実は「やってはいけない」商談テクニックや話し方について解説していこう。
文/佐々木亘、写真/Adobe Stock(メイン写真=tkyszk-Stock.Adobe.com)
■他店と比較して値引き交渉は逆効果の場合も!
商談は、他と比較する作業ではなく、目の前の相手から条件を引き出すためにおこなう「交渉」である。他者や他社と比較するだけでは、値引きにつながりにくいということを知っておいてほしい。
「他では〇〇円だ」、「知り合いは〇〇をサービスしてもらった」という比較は、営業マンの売る気を大きく削いでしまう。面倒な人に当たったなと思うし、営業マンからすると「じゃあ、その安いところで買えばいいじゃないか」と、心の中でツッコミを入れていることが大半だ。
他社とよく比較する人は、好条件を提示しても、それをまた他社に持っていき、際限なく値引きを要求する傾向が強い。さらにはトラブルメーカーも多く、それなら関わるのは御免だと、営業マンのほうから遠ざかることもあるだろう。
いつも隣の芝は青く見えるものだが、自分が納得して購入できたなら、それが100点満点の商談なのだ。比較ではなく交渉に終始するのが、商談に臨むうえで大切な姿勢である。
■知ったかぶり、情報通気取りはやめよう
理論や情報で武装してからディーラーを訪れる人がいるが、商談は知識を披露する場所ではない。もちろん、商品購入に際して必要な情報を手に入れることは重要だが、テクニックや、クルマの知識で営業マンに対しマウントポジションを取りにいっても、上手くいかないものだ。
一般的な自動車ユーザーが、一生の間に購入するクルマの台数は、10台~20台がいいところだろう。一生のうちにクルマの商談をする回数も、自ずと10回~20回程度となる。
では、営業マンはどうだろう。メーカーやブランドにもよるが、一人の営業マンが年間に販売するクルマの台数は40台~50台前後、人によっては年間100台以上を売ることもある。もちろん、売った数だけ商談があり、一人の営業マンが1年にこなす商談回数は、100を超えていく。
一生に10回と年間に100回。どちらの経験値が上で、どちらが上手なのかは、明らかだろう。
情報通、テクニック通を気取っても、すぐにそのメッキは剥がされる。さらに営業マンのペースを狂わせると、対応しにくい人と思われてしまい、交渉がスムーズに進まなくなってしまうのだ。
商談の場は、圧倒的に経験豊富な営業マンにリードしてもらいながら、気持ちよく進め、心象良く値引きを引き出していきたい。営業マンのやる気スイッチは、お客様である皆さんの、言動ひとつでONにもOFFにもなるのだ。
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