「打倒シビックタイプR」を目標に、1997年に登場した「パルサーVZ-R」。リッターあたり100馬力越えのFFホットハッチであるパルサーVZ-Rは、当時の王者EK9型シビックタイプRよりも強い馬力で、FFスポーツファン胸アツなモデルだった。
懐かしのFFホットハッチ、N15型パルサーVZ-Rの実力と歴史を振り返ってみよう。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、TOYOTA、HONDA、MITSUBISHI、ベストカーWEB編集部
先代「N14型パルサー」が大活躍
国産スポーツカーが最も輝いていた1980~1990年代初期。日産からも、第2世代スカイラインGT-R(R32:1989年~)やフェアレディZ(Z32:1989年~)、シルビア(S13:198年~)、プリメーラ(P10:1989年~)、など多くのスポーツモデルが登場していた。パルサー(N14:1990年~)も、その中の一台だ。
当時は、日本ではラリー競技を中心としたスポーツ4WD界隈が大盛況していた時代。ブルーバードSSSや、セリカGT-FOUR A、ギャランVR-4、ファミリアGT-X、レガシーRS type Rなどが参戦した、自動車メディア主催によるバトルレースは、今でも記憶に残っている方も多いだろう。
そんななかに登場したN14型パルサーには、WRCへ参戦を前提とする「パルサーGTI-R」が存在した。
2.0リットル230psを発生するSR20DET型ターボエンジンと、フルタイム4WDシステム「ATTESA」など、当時の日産が持つ技術が満載されたモデルで、大型のインタークーラーを収めたフードバルジや大型のリアスポイラーを備えた厳ついスポーツ4WDながら、発売時の価格は228万円(1991年式パルサーGTI-R)という低価格。
WRCでも、グループN では年間タイトルを獲得する、という活躍ぶりで、N14型パルサーGTI-Rは、ファンから高く支持されていた。
EK9よりも15馬力も上だった「赤ヘッド」
そんなN14型パルサーが、N15型へとバトンタッチしたのは、1995年のこと。その後、1997年のN15型パルサー後期型マイナーチェンジのタイミングで、スポーツモデルの「VZ-R」が登場する。
ホンダVTECや三菱MIVECと同じく、可変バルブタイミング&リフト機構「NEO VVL」を備えたSR16VE(通称:青ヘッド=175馬力)を搭載し、トランスミッションは5速MTのみ。
また、N1レースへの参戦を視野に、オーテックジャパンの手によって、SR16VEエンジンを最高出力200馬力までチューニングされた「VZ-R・N1」(通称:赤ヘッド)も登場。
リッターあたり125馬力は、シビックタイプR(EK9)の185馬力を、15馬力も越えていた。改造範囲が最小限に抑えられているN1は、素のクルマのポテンシャルが、レースの結果につながるとあって、息をまいてチューンアップに努めていたのだ。
さらに翌年の1998年には、シャシーパーツ強化と軽量化を実現した「VZ-R・N1バージョンII」が300台限定で登場。スプリングのバネ定数を強化し(フロント車高ダウン、スタビライザー径をアップ)、ショックアブソーバー減衰力を再チューニング、タイヤは205/50VR15 (DUNLOP製FORMULA W-10)とワイド化し、ENKEI製の超軽量15インチアルミホイール(オプション)を装着。
大口径専用マフラー(フジツボ技研製)、専用モノフォルムバケットシート、MOMO製本革巻スポーツステアリングなど、レース専用アイテムが与えられていた。
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