皇室で利用される御料車や、内閣総理大臣専用車としても使われてきたセンチュリー。日本のショーファードリブンとして、長きにわたり最高級車の地位に君臨するクルマだ。
実際に乗車したり運転したりする機会は少ないが、テレビなどで目にする機会が多いクルマである。手の届かない遠い存在のようにも思え、センチュリーに対して、様々な憶測や噂が流布されているのを、読者の方も聞いたことがあるのではないだろうか。
今回は、トヨタディーラーで営業職に就いていた筆者が、センチュリーにまつわる都市伝説を一つ一つ解明していこう。
文:佐々木 亘
【画像ギャラリー】レクサスより工賃安い!! 日本の至宝センチュリーの歴史振り返る(13枚)画像ギャラリー■なぜセンチュリーには、様々な都市伝説があるのか
一般的な乗用車とは一線を画し、大衆が近づく余裕がないクルマがセンチュリーだ。存在は知っているが、その得体は知れない。それゆえに、根も葉もない噂が広がり、ひいては都市伝説のような形で語られている。
トヨタディーラーで勤務していても、センチュリーを見ることは少ない。
ディーラーに試乗車や展示車などはほぼ無く、販売店の役員クラスのトップ(社長や会長)の送迎用車両として1台存在するかどうかだろう。タイミングよく本社へ行かなければ、内部の人間でも、その姿を拝むことはできない。
詳しく知る機会を奪われたセンチュリーに対して、様々な人が想像で情報を広げていく。こうした情報が、センチュリーの都市伝説のように持て囃され、現在も残るのだ。
こうした情報の本当のところを、解明していく。
■センチュリーの都市伝説いろいろ
・購入時に特別な審査をされる?
センチュリーを販売する時にだけ、購入審査があるという事実はない。例えば「あなたには、ヤリスは売るけど、センチュリーはダメです」ということはないのだ。
ヤリスを販売できる相手ならセンチュリーも販売できる。その逆もしかりで、センチュリーが販売できない相手には、ヤリスも販売できないというわけだ。
現在、ディーラーが販売をお断りするケースは非常に少なくなった。販売拒否が考えられるのは、販売店と著しく揉め事を起こして、一切の取引をしない旨の通達をされた人や、問題行動が多く、販売店間の情報交換によりブラックリストに入っている人物。そして、反社会的勢力への販売だ。こうした例以外では、余程のことが無い限り、販売自体を断られることはない。
ただし、車両本体価格が2,000万円を超えるクルマだ。販売店としては、オーダー後のキャンセル防止策に余念は無い。
オーダーから支払い、そして納車までを確実なものにするため、注文者の人物像や、資力は入念に確認するだろう。購入金額の5~10%程度を、注文時に前金として支払ってもらい、信頼性を高めるという動きも珍しくは無い。
高額車両なだけに、販売側も慎重になる結果、「情報収集」が「審査」という言葉に置き換わり、独り歩きしたのではないだろうか。
・カタログが有料?
センチュリーのカタログを見たことがあるだろうか。シボ加工がされた手触り良い黒いケースに収まり、カタログにはしっかりとした分厚い表紙と裏表紙がある。中は写真集のように分厚いしっかりとした紙が使用されており、さながら薄い卒業アルバムのようだ。
ディーラーは、一般的なカタログを1冊100円前後で入手できるが、センチュリーのカタログだけは1冊1,000円以上と高額になる。基本的にユーザーへは無料で配布するものの、高額カタログのため、ディーラーでの在庫数はわずかだ。
WEBカタログが広がりを見せており、紙のカタログを置かないお店も増えてきた。センチュリーのカタログについては、在庫が切れたら、もう注文しないと決めているお店も一部にはある。
トヨタHPでのカタログ請求も、センチュリーだけは注文できなくなっている(車種選択にセンチュリーだけが載っていない)。カタログは有料ではないが、今となっては非常に希少なモノとなっていることは確かだ。
・ディーラーの工賃が他のクルマより高い?購入後は監視される?
センチュリーだけが特別な整備を必要とするわけではなく、基本的に販売店でのメンテナンスにかかる工賃は、他のクルマと同じだ。ただし、一部の部品は他車の比ではないほど高い。
アワーレートと呼ばれる1時間当たりの工賃は、トヨタディーラーが8,000円前後、レクサスディーラーが1万円前後となっている。したがって、センチュリーよりもLSの方が、工賃は高い。
また、購入後に厳しい管理をされるといった話もあるが、ヤリスでもセンチュリーでも、納車後のアフターフォローは密に行い、自社でリピート利用をしてもらえるように努力する。センチュリーだからと、トヨタから監視されることは無いので、安心して欲しい。
わからない存在であるからこそ、様々な憶測が飛び交う。様々な都市伝説は、センチュリーが稀有で高貴な存在であるということの裏付けなのだろう。
日本随一のショーファードリブンは、様々な都市伝説を引き連れながら、これからも日本の最上級車として輝き続ける。
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