風前の灯…名門フーガの実力と「残しておく意味」

風前の灯…名門フーガの実力と「残しておく意味」

 「セダン」というカテゴリーの影がどんどん薄くなっている。特に高級セダン市場の販売台数は全体的に低調で、ホンダのフラグシップセダンだった「レジェンド」は販売終了に追い込まれ、トヨタのフラグシップセダンである「クラウン」は、次期型でSUVになるという噂がある。日産車でも、フラグシップセダンである「シーマ」のみならず、高級セダンである「フーガ」も、近々生産終了になるという情報が出てきた。

 現行型は2009年11月に発売され、すでに12年選手となるフーガ。「セドグロ」の魂を受け継ぎ、長年日産の高級セダンとして君臨してきたフーガが廃止となってしまうのは、ファンとしては非常に寂しい。はたしてフーガはこのまま消滅してしまってもいいのか、残しておくべきなのか、フーガの実力を振り返りつつ、考察しよう。

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN

【画像ギャラリー】セドリック/グロリアの系譜を継ぐドライバーズカー 日産「フーガ」の初代モデルと現行2代目モデル(33枚)画像ギャラリー

SUVが台頭するなかで誕生した初代フーガ

 1970年代から80年代にかけて、日産の高級セダンとして一時代を築いた「セドリック」と「グロリア」。伝統的な後輪駆動のパーソナルセダンとして、流行のスタイリングや最新の装備を取り入れつつ、ライバルのクラウンとしのぎを削ってきた。

 その伝統的を引き継ぐ後継車として2004年10月に誕生したのが、初代フーガ(Y50型)だ。厚みのあるボディとスポーティで若々しいスタイリングと、BMWの5シリーズをターゲットに開発されたことによる高い走行性能や快適性、インテリアの質感で、登場当時から非常に完成度の高いモデルだった。

 フロントミッドシップにエンジンを配置した「フロントミッドシップパッケージ」の採用や、レスポンス・高回転の伸びを重視したセッティングの3.5リッター縦置きV型6気筒のVQエンジン、日産車初のプッシュ式エンジンスターターボタンの採用など、見た目を裏切らない走りのよさと次世代を予感させる装備が特徴。

 2004年頃といえばすでにSUV人気も上昇し、ハリアーが高級車として認められるようになった時代であったが、初代フーガは十分な存在感と魅力を放つモデルだった。

初代フーガ。スタイリッシュで若々しいデザインと本物志向の走りが魅力的
初代フーガ。スタイリッシュで若々しいデザインと本物志向の走りが魅力的

スポーツセダンとしての高い実力を証明してみせた現行フーガ

 現行型である2代目フーガ(Y51型)は2009年11月に登場。初代のスポーティ路線を継承しつつ、アスリートのように動きのある筋肉質なボディラインに生まれ変わった。国内仕様版のエンジンは当初2.5L V6と3.7LのV6が設定されていたが、2010年11月に「フーガ HYBRID」が追加された。

 3.5L V6アトキンソンサイクルエンジンにモーターを組み合わせたパラレルハイブリッドで、モーターのみの走行も可能。このフーガ HYBRIDの北米仕様車は、0-400m加速で13秒903を記録し、世界最速の市販ハイブリッドとして、当時のギネス世界記録に認定された。これは、ポルシェパナメーラのタイムに勝るものであり、スポーツセダンとしての高い実力を証明した。

 インテリアは大きくうねりのある、曲面を多用したダッシュボードパネルやドアトリムが特長で、木目調もしくは本木目のフィニッシャー、鈍い金属調の輝きを放つ仕上げなど、高級車の王道を行く高い質感だ。

 デビュー以来、ビッグマイナーチェンジや定期的な一部仕様向上などが実施され、ハイブリッドのシステム改良、エクステリアの刷新、先進安全運転支援システムの向上、装備の充実など度々ブラッシュアップがなされてきた。一時期、エンブレムで迷走する様子も見られたが、高級スポーツセダンとして何とか復権を果たそうという、日産の気概を感じなくもないエピソードだった。

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