スパイが主人公の作品といわれて、誰もが思い浮かべるのは『007シリーズ』だろう。だがその裏側で、007製作者によって生み出されたもう一つのスパイシリーズが今回ご紹介する『ハリー・パーマー』シリーズだ。
『オースティン・パワーズ』や『キングスマン』も影響を受けたこの名作をご紹介しよう!
文/渡辺麻紀、写真/スターチャンネル
(C) Altitude Film Entertainment Limited 2021 All Rights Reserved. Licensed by ITV Studios Ltd
■ボンドシリーズの製作者自らが生み出した007へのアンチテーゼ
1962年から始まったメイド・イン・UKのスパイシリーズと言えば『007』。世界を股にかけ、高級車を乗り回し、美女をはべらせるゴージャスなスパイ。ジェームズ・ボンドは、みんなが憧れるかっこいい存在として描かれている。
今回ご紹介するのは、ボンドシリーズの製作者ハリー・サルツマンがそのアンチテーゼ的に作った映画『ハリー・パーマー』シリーズの第一作目『国際諜報局』(1965)のTVリメイク『ハリー・パーマー 国際諜報局』だ。
ハリー・パーマーは、英国の作家レン・デイトンが生んだキャラクターで、同じ時期に生まれたボンドとは対照的なスパイ。出身も労働者階級、西ベルリンに駐在していたとき物資を東側に横流しして刑務所に入れられている。
が、そのクレバーさとしたたかさ、人脈の豊かさを買われて、新しく開設された諜報部署にリクルートされるのだ。
そういうわけなのでボンド的な華やかさはゼロ。黒縁眼鏡にステンカラーコートスタイルがトレードマークで、領収書を提出したりなどデスクワークもこなし、(オリジナルの映画では)スーパーで食料品を買い込み、アパートで自炊する。料理は趣味なので、キッチンの壁や柱にはレシピが貼られているほどだ。
オリジナルで、その主人公を演じたのはマイケル・ケイン。それまでほぼ無名だった彼が大ブレイクしたきっかけの作品でもあり、その後、『パーマーの危機脱出』(1966)、『10憶ドルの頭脳』(1967)の2本が映画化されている。
コメント
コメントの使い方