今年のアカデミー賞は『ドライブ・マイ・カー』が国際長編映画賞を受賞するなど話題が豊富だが、ダントツで大きなニュースとなったのがウィル・スミスの騒動だろう。多くの大作に出演し、日本でも人気が高いだけにショッキングであった。
今回はそんな騒動を忘れさせてくるような、ウィル・スミスが大活躍するアクションムービーをご紹介したい!
文/渡辺麻紀、写真/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
■受賞とは別件で世間を騒がせたウィル・スミス
日本でも人気の高いハリウッドスター、ウィル・スミス。アクションスターの印象が強いが、演技にも定評があり、これまで2度のアカデミー賞ノミネートを誇り、今年はついに『ドリームプラン』で受賞を果たした。
とはいえ、話題になったのはその栄誉のほうではなく、奥さんのヘアスタイルをジョークのネタにした司会者を、怒りに任せて平手打ちした事件のほう。
一時は、ハリウッド追放!? アカデミー賞剥奪!? なんていう憶測まで流れたが、最終的には、これから10年間、アカデミー協会が主催するイベントへのお出入り禁止という比較的軽い措置で収まった。
そんなスミスのキャリアをカーアクションで振り返ってみると、やはり『バッドボーイズ』(1995)になる。
製作は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ等のヒットメーカー、ジェリー・ブラッカイマー、このコーナーでお馴染みの車大好き監督、マイケル・ベイの劇場映画デビュー作であり、スミスにとってはアクションスターとしての魅力を発揮した記念すべき作品である。
もちろん、これが大ヒットして、2003年にはベイ×スミスでシリーズ2作目『バッドボーイズ2バッド』、そして2020年には、監督をベルギー出身の二人組、アディル・エル・アルビ&ビラル・ファラーに代えて3作目となる『バッドボーイズ フォー・ライフ』が公開された。
今回、ご紹介するのは、一番新しいこの『~フォー・ライフ』だ。
『バッドボーイズ』はマイアミ市警の二人組刑事、マイク・ラーリーとマーカス・バーネットこと“バッドボーイズ”の活躍を描くバディアクション。
スミス扮するマイクはブランド物のファッションで身を固め、愛車はポルシェという、刑事には見えない派手な独身男。一方、マーティン・ローレンス扮するマーカスは、恐妻家で家族が第一というファミリーマン。水と油のふたりが手を組みマイアミならではの事件を解決するというのがパターンになっている。
■1作目では「持ち出し」だったポルシェ
もうひとつ、車ファン的に注目したいパターンがポルシェ。1作目のときのマイクの愛車はポルシェで、2作目はなぜかフェラーリ575Mマラネロ(スタントシーンでは550マラネロが使われた)になり、3作目では再びポルシェになった。
1作目のときはスタジオ側が製作費の関係でポルシェを借りたがらず、製作側も資金がなく、ポルシェ側もサポートを断ったので、仕方なくベイが自分のポルシェ911を貸すことになったと言われている。
ベイもスミスもまだ映画界では駆け出しだった時代らしいエピソードだが、もしかしたらベイは、それが苦い思い出になり、再び自分がメガホンを取った2作目はフェラーリに変更したのかもしれない。ちなみにベイは1作目の自分のポルシェを撮影終了後、友人のプロデューサーに売却している。
3作目となる『バッドボーイズ フォー・ライフ』ではもちろんそんなことはまるでなく、ポルシェは新型の911カレラ4Sを提供。オープニングからスミス&ローレンスがこの車でマイアミの市街地を大暴走する。
陸はパトカー、海はジェットボート、空はヘリと三方面から追いかけられつつ、道路はもちろんビーチも路地も通り抜け、ワケあって病院に急行する。
刑事が警察に追われるという、いかにもバッドボーズらしいエピソードから物語は幕を開けるのだ。
今回の物語は、その病院に急行したワケが大きなフックになっている。そもそも家庭人だったマーカスに初めての孫が生まれたことでより家庭人になり、マイクとチームを解散。ひとりになったスミスは、そんな彼を連れ出し、連続殺人事件の謎に挑戦する。
この連続殺人事件にも「家族」が大きく関係していて、これまでの2作よりもドラマチックな展開。が、だからといってアクションが手抜きになっているはずもなく、むしろヴァラエティに富んでいるといえるかもしれない。