クルマ好きはついつい、“ATなんかつまらないよ!”なんて言ってしまうんだけど、それ、いったいいつの価値観なの!? 現代のATと1970~1980年代のATは全くの別物!
現代の2ペダルは有段ATは8速、9速当たり前で10速ATなんてのもある。CVTだって制御が緻密に進化してダイレクトなトルクコントロールで挙動を操れる。
自動車評論家 斎藤 聡氏がラインナップに3ペダルMT仕様が設定されていても、“あえて”2ペダルで乗って楽しいクルマを厳選・解説!!
※本稿は2022年5月のものです
文/斎藤 聡、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年6月10日号
※「2ペダル楽しい度」はMTを100%とした場合の数値です
■進化の絶えないAT
昔「MTこそがスポーツでATは大きく劣る」……などと言われていたけれど、今やATの性能向上は目覚ましくATでも充分にスポーツドライブが楽しめるようになっている。
まず思い浮かぶのがGR86のAT。このクルマ、サーキットでの印象はあまりよくはなかったのだが、公道を走ってみるとこれが目を見張るほどいい。
ステアリングのセンターがしっかりしていて、そこからハンドルを切り出すと、意外なくらいしっとりした所作で、スイっとノーズが向きを変え、するりと曲がってくれるのだ。
MTにも乗ったけれど、AT用のサスセッティングのよさがより効いているようだ。2.4Lになってトルクアップしたエンジンとのマッチングもよく、ちょっとびっくりするくらいATとのマッチングのよさを感じたのだ。
コスパ最強のFFスポーツ、スイフトスポーツもATで走りの楽しいクルマに挙げたい。シフト操作を駆使して走る楽しさはMTが格段楽しい……と言えるのだが、これを乗りこなせるのはかなり上級者。コンパクトなのにターボパワーが強烈でシフト操作にはそれなりに運転の慣れ(スキル)と必要になる。
ただターボエンジンだからこそ動力の断続のない6速ATとのマッチングもいいのだ。ハンドルを常に両手で操作できるので、安心して運転に集中できるのがATのメリット。操縦性は言うまでもない。充分に刺激的な加速を見せてくれる。
それからシビックのAT(CVT)も走りが楽しめる一台だ。CVTなのに? と思われるかもしないが、モードスイッチでスポーツモードを選択すると、ほぼギアが固定されて、パドル操作で任意のギアを選ぶことが可能。
それほどソリッドなMT感覚はないものの、ターボのレスポンスが素晴らしくよく、まるでNAエンジンのような感覚。重心が低く身のこなしの切れ味のいいシビックの走りとバランスしているので山道を楽しく走ることができた。
マツダ3、ロードスター、ロードスターRFのマツダ車3台もちょっと毛色は違うけどATが楽しいクルマ。
マツダは幸か不幸か(?)ATの多段化が後回しになっていたこともあっていまだに6速ATのまま。
ところがこのギア比の感じ(ステップ比)がMTとよく似ていて、同じリズムで運転できるのだ。
加速していく時のシフトアップしていくタイミング、減速する時、パドルシフトを使ってシフトダウンするタイミングなど、改めてATとMTの走りの違いを意識して走らせてみると、運転のリズムがほぼ同じなのだ。
マツダの場合は速さよりも「一体感」を大切にクルマを作りこんでいるので、ATでもエンジン回転を高めにして走っていると、アクセルの微妙な操作に対するエンジンの反応がドライバーの意図通りに得られるのだ。このあたりのチューニングは巧みで感心させられる。
スポーツドライブを2ペダルで楽しめるのは、ここ近年のATの進化が著しいため。AT特有の滑り感とかあいまいさを乗り手に意識させることなく制御できるようになっているのだ。その結果MTよりも印象がよい、走って楽しいATができているのだ。
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