「アイドル沼」に「キャンプ沼」「筋トレ沼」など、世の中には多種多様な沼がある。一度足を踏み入れるとその魅力に魅了されて、抜け出すことができなくなる世界だ。
当然(?)、自動車界にも「輸入中古車の沼」という大変危険な沼がある。はたしてそこにはどんな苦難と快楽(?)が待つのか??? 今回はまだ軽度! だからまだ大丈夫!! 初級編をご紹介!!!
※本稿は2022年5月のものです。中古車相場は執筆当時のものです
文/伊達軍曹、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年6月10日号
■クルマとしてのお国柄が濃厚だから…
何かの趣味にハマることを、最近は「沼落ちする」と表現する場合が多い。
例えばアイドル沼に沼落ちし、生活時間の大半を“推し活”に捧げているような人を見ると、多くの人は「大変そうだなぁ」などと思うかもしれない。
だが沼落ちしている本人は至って幸せで、むしろ“推し”を持たずに生きている人を憐れんでいたりもする。
輸入中古車沼も、おおむねそれと同様である。
国産車愛好家からすれば、輸入中古車沼にハマっている人は「しょっちゅう壊れる金食い虫を飼ってるかわいそうな人」に見えるのかもしれない。
だが本人たちは至って幸せというか、輸入中古車沼で溺れることを「むしろ楽しんでいる」という精神状態だったりするのだ。
人間をそのように異常な(?)精神状態にする輸入中古車沼とはどんなものなのか?
そして、もしもそんな沼に入ってみようと思ったならば、どうすれば上手に溺れることができるのか? 検討してみることにしよう。
まずは飛び込んでみるしかないというか、とりあえずは“ほとり”に足を踏み入れてみないことには理解できないのが、輸入中古車沼の魅力。
ということで「じゃあみなさん、まずは一緒に飛び込んでみましょう!」と言いたいわけだが、ほとんどの人は、そんなことを言われたところで飛び込みはしないだろう。
なぜならば、現状、すなわち「国産車がある生活」に充分満足しているからだ。
「快適で高性能で、すぐ近くにディーラーもあって、ついでに部品代も高くないという素晴らしい国産車があるのに、なんでわざわざポンコツで不便な中古のガイシャを買わにゃならんのだ? アタマ沸いてんのか?」というのが、国産車党各位の偽らざるお気持ちだろう。
確かにそのとおりではある。ならば、まずは輸入中古車沼の魅力そのものを、各位にプレゼンせねばなるまい。
輸入中古車沼というか輸入中古車というものの魅力。それは、「日本にいながらして強烈な異文化体験ができる」ということだ。
当企画の最初のページで「最近の輸入車は“お国柄”が希薄である」ということを申し上げたが、逆に言えば、それは「ちょっと前までの輸入車の“お国柄”は強烈である」ということでもある。
1980年代か1990年代前半ぐらいまでのメルセデスベンツに乗れば、よくも悪くもゲルマンな誇りと奢りのようなものを体全体で感じることができ、同時期のイタリア車のセクシーすぎるV6エンジンをレッドゾーン近くまで回してみれば、意識は瞬時にローマ市内まで持っていかれる。
そしてもちろん、同時期のやや難解なデザインと機構を持つフランス車でもってそのへんの国道を走れば、気分的にはモンパルナスのカフェでボンソワールである。
そんな異文化体験が楽しく、そして最初のうちは「国産車とはずいぶん違うカルチャーと乗り味だなぁ」なんて思っていた部分を、次第に「……自分はこっちのほうが好きかも? むしろ合ってるのかも?」とも思うようになり、最終的には帰ってこれなくなる。
主にはこれが、輸入中古車沼に沼落ちする際の基本的なメカニズムだ。
そしてそんな輸入中古車沼で溺れるためには、いや、まずは沼のほとりでちょっと足を浸からせてみるうえでは、本コラムで紹介する8車種のうち、どれかがお薦めとなる。
いずれもそれなり以上に濃いめな魅力というかディープな個性を備えたクルマではあるが、比較的メジャーな存在であるため、専門店の数や手頃な価格のOEM部品の種類などは多い。
それゆえ「なんだかんだでけっこう維持しやすい」というのが特徴となるモデル群だ。
世界的なネオクラシックブームのせいで相場が上がってしまっているのが難点ではあるのだが、まずはこれらの“浅瀬”に足を踏み入れてみてほしい。
そうすれば、“沼”の魅力の一端は確実に理解できるだろう!
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