SUVは実際、戦時中の軍用車両をルーツに持つ。一方、民用車としての「ジャパニースSUV」は初代スズキ エスクードあたりから人気が持ち上がり、今では一大カテゴリーに成長した。
もともと軍用が源流であるから、SUVはどちらかといえば、武骨な外観デザインがほとんどであった。が、最近は流麗さを求めた「クーペSUV」が段々と増えてきているという。本企画ではそんなSUVの変遷について、筆者に解説してもらった。
文/石川真禧照
写真/マツダ、ベストカーweb編集部
■乗用4WDとクロカン4WDのいいとこ取りをしたSUV
日本でSUVというジャンルが確立したのは2000年代に入ってからだった。それまでは、RV(レクレーショナルビークル)というカテゴリーだった。さらに時代をさかのぼると、クロスカントリー4WD、オフロード4WDという名称で認識されていた。
SUVという名称が出はじめたのはトヨタが1990年代半ばにRAV4を発売してから。同じ頃にホンダも初代CR-Vを発売している。ホンダはこのCR-VをクロスオーバーSUVと称していた。両モデルに共通しているのは、乗用4WDのコンポーネンツを用いて、車高の高いワゴン形状のボディを架装していたことだ。
乗用4WDとクロスカントリー4WDのいいとこどりをしたのがSUV(スポーツユーティリティビークル=多目的スポーツ車)として新しいジャンルを確立したのだ。
日本にSUVが登場してから20年が経過した。この間に国産車のSUVは各メーカーから発売された。もちろん、わが国独自の軽自動車にもSUVは登場している。
■2010年代から増えるクーペSUV
そのSUVに最近になり、新しい動きが出始めている。それがクーペタイプのSUVだ。これまでのSUVはルーフがリアエンドまで伸び、テールゲートは垂直とまではいかないが直立していた。
ワンボックスカーやミニバンに近い室内高と空間を持ちながら、乗用セダンに近いドライビングポジションを実現したことから、ファミリーカーとしての人気を集め、今やファミリーカーの中心はミニバンではなく、SUVに移ってしまった。そのSUVにこれまでとは異なる形状のクルマが登場しているのだ。
その兆候は、実は2010年あたりから感じられた。その年に日産がジュークを発売したのを覚えているだろうか。コンパクトSUVだったが、ボディ後半のデザインはクーペ的で、スポーティな走りを実現していた。
リアシートを多少犠牲にしても、スタイリング重視のスポーツクーペのようなSUVを作る。このアイデアを国産メーカーでいち早く実現したのが日産だったのだ。
コメント
コメントの使い方