ジャパニーズSUVが紡ぐ新しい傾向、「クーペSUV」という潮流

■無骨になりがちなSUVをエレガントに

 一方、世界に目を向けると、BMWがこの分野に目をつけ、実用化していた。

 2007年にデビューしたSUV、2代目X5をベースに、ボディ後半をクーペ化したX6を2008年に発表、発売したのだ。BMWはXシリーズを発売した時に、SUVという名称を使わずに、SAV(スポーツアクティビティビークル)という造語を考え出し、使用していた。X6はその延長線上で、SAC(スポーツアクティビティクーペ)を名乗った。

 この新SUVクーペは販売戦略において成功した。この成功に気をよくしたBMWは、2014年に2代目X3をベースにしたSUVクーペのX4を発売した。さらに2018年には2代目X1をベースにしたX2をデビューさせている。

 SUVクーペを開発した目的をBMWに取材してみると、「もともとSUVというのはスタイリングが武骨になりがち。SUVにエレガントさを求めるユーザーもいるので、スタイル優先のクーペを開発した」と言っている。

■BMWに続け!?

 確かに初めてSUVクーペとしてデビューしたX6に試乗してみると、X5に比べてリアシートは低めになった頭上スペースを確保するために着座位置を低くしていた。

 目の前はフロントシートの背もたれが拡がっており、閉所感があったのはいなめなかった。スタイリング重視のSUVを作ったのだ。しかし、モデルチェンジを繰り返し、その閉所感も巧みに処理するようになった。デザインもそれまでのSUVにはない、スポーティで、スマートなスタイリングだった。

 ちなみにBMWのライバル、メルセデスベンツは2015年に発売した初代GLEクラスをベースに翌年の2016年にクーペを発表している。これがメルセデスとしては初のSUVクーペだった。レンジローバーイヴォークは2011年デビューの初代モデルからクーペを設計している。これもBMWの成功を見ての動きだ。

 国産車では日産ジュークなどが発売されたものの、ベースにSUVがあり、それをクーペ化したクルマは市場に出てこなかった。ファミリーカーとして位置付けていたので、遊び的要素の多いクーペは、販売台数が望めないと考えたのだろう。

 例によって、売れる売れないで生産を決定する日本メーカーらしい判断だ。

■SUVは現代のセダン

 その流れに逆らうように登場したのがマツダのMX-30だ。MX-30はCX-30をベースにクーペ化したモデル。

 ホンダヴェゼルやレクサスUX、三菱エクリプスクロスといったクーペ系モデルと異なるのは、ノーマルSUVがあり、そこから派生する形でクーペを作ったことだ。

 MX-30を開発した理由はどこにあるのか。BMWと同じような理由なのかを取材してみると、「マツダとしては、SUVが今の時代のスタンダードカーだと考えています。セダンがスタンダードカーの時代には、多様化としてセダンをベースにしたクーペやコンバーチブルがありました。それと同じで、SUVのなかでユーザーニーズの多様化に合わせてボディ形状を揃えたのです」との答え。

「心がととのえられる」空間を提供することを目指したCX-30。狭いイメージのあるクーペスタイルでありながら、観音開きドア採用で開放感があるという相反する感覚を演出
「心がととのえられる」空間を提供することを目指したCX-30。狭いイメージのあるクーペスタイルでありながら、観音開きドア採用で開放感があるという相反する感覚を演出

 マツダとしてはファミリーカーの中心がSUVになったのだから、派生車種として遊び心やパーソナル化としてSUVクーペをラインナップした、ということなのだ。

 マツダは今後、CXシリーズやMXシリーズを拡大していく予定だが、このなかにもSUVクーペが用意されているはず。

次ページは : ■国産SUVは生まれるのか

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