自動車をよくご存じの方なら「マツダ地獄」という言葉を聞いたことがあるだろう。
かつてのマツダは新車を大幅に値引きして販売。その影響でマツダ車の中古車価格は相対的に低くなり、下取り価格の相場も当然安い。しかし、マツダは新車を売りたいから、他社より高値でマツダ車を下取る。だから、オーナーはマツダ車から抜け出せなくなる。
このようなスパイラルがマツダ地獄と呼ばれた。
だが、いまや状況は変わった。2012年のCX-5発売以降、マツダはデミオ、アクセラ、アテンザなど新世代車を次々に販売し、それらのモデルでは従来の大幅値引き戦略は控えられた。そして、CX-5は2世代目のモデルに移行。
新世代車が一巡した今、マツダ地獄は果たして過去のものとなったのか? 販売現場の実情から検証する。
文:遠藤徹/写真:編集部
ベストカー 2018年8月10日号
シェアアップのマツダ、販売現場の実情は?
マツダの2018年1〜5月の新車販売累計台数は10万1015台で、前年同期に比べると6%増。国内市場全体の1.1%減からみると僅かにシェアアップしている。
ただ、部門別、車種別に分析するとあまり喜べない側面も伺える。登録車が8万1897台の5%増、軽自動車(スズキからのOEM車)1万9341台の8.8%増であり、スズキの新型車攻勢に多少助けられている部分もあるといった状況となっている。
2017年9月に発表、年末に発売したCX-8と2018年5月にマイナーチェンジしたCX-3が好調に売れているが、本来、販売台数でリードすべき戦略モデルのデミオや中核SUVのCX-5、アクセラが古くなっているために大幅なマイナスとなっている。
デミオは前年同期比ではプラスであるものの、販売台数は月販3500台規模に過ぎず、同クラスのライバル車であるアクア、ヴィッツ、ノート、フィットなどに大きく引き離されている。
この実情に対して首都圏のマツダ販売店営業担当者は、「現行モデルが発売になってから4年近くが経過しているので、ライバル車との競争力が落ちているのが要因だ。
売りである1.5Lクリーンディーゼル車は発売当初はシリーズ全体の約70%を占めていたが、最近では50%以下に落ちている。
ヨーロッパで排ガス測定の不正が発覚、窒素酸化物規制でも不利になり撤退するメーカーが出て、マーケットニーズが低下しているのも多少影響している」と頭を抱えている。
気になるマツダ車の値引き幅の現状
ただし、デミオは2018年8月下旬に一部改良し、ガソリン1.3L車の代わりに1.5L車を設定するなど商品ラインアップを強化するので、以降は多少回復する可能性もある。
発売したばかりのCX-8は今のところ好調でマツダSUVのトップセラーモデルに浮上している。
こちらは2.2Lクリーンディーゼルエンジンのみの設定だが、「新型車効果とトルクフルな走りがSUVコンセプトにマッチしているためだ。需要が一巡すれば、頭打ちになってくるだろう」(前述営業担当者)と今後を予想する。
値引き幅は「クリーンディーゼルや次世代環境技術のSKYACTIVで売り出した当初は引き締めていたが、モデルが古くなるとどうしても拡大気味になる。
それでも以前の乱売に比べると値引き幅はずっと小さくなり、リセールバリューは上がっている」(同)と打ち明ける。
したがって「甘いか辛いか」を販売現場の本音として結論づけると、その両方が混在するといった微妙な見方が正解といえるだろう。
コメント
コメントの使い方