シビックタイプRをも凌駕するホットハッチ、ルノー メガーヌR.S.の新型が発表されたのはつい先日、8月30日のことだった。その性能の高さは言うまでもないが、興味深いのは“心臓部”。279馬力を発揮する1.8Lターボエンジンは、なんと日産のシルフィに搭載されるエンジンがベースだという。
エンジン開発には多額の研究費が投じられる。コストを抑えるために1車種だけでなく他車種に転用し、生産量を増やす例は特に近年増えている。
しかし、シルフィとメガーヌR.S.のように“一見、何の関係もないように見える実用車のエンジンをベースにスポーツエンジンが生み出された例”は、それほど知られていない。
このメガーヌR.S.の例を端緒に、本稿では逆にスポーツカー用エンジンが別モデルに転用されたケースも紹介。過去を振り返れば、GT-Rのエンジンをそのままのスペックで活用した異端モデルも存在したのだ。
文:片岡英明/写真:編集部、NISSAN
メガーヌR.S.のエンジンは日産ベースの“日仏合作”
ルノーを代表するFF・2ボックスのメガーヌにはホットハッチのR.S.がある。R.S.が搭載するのは、“M5P型”と名付けられた1798ccの直列4気筒DOHC直噴ターボエンジンだ。アルピーヌA110には直噴ターボではなく自然吸気エンジンを積んでいる。
このエンジンは、シルフィなどに積まれている日産設計のMR18DE型エンジンをベースに開発された。
ただし、ロングストローク化している。M18DE型(日産)はボア84.0mm、ストローク81.1mmで、排気量が1797ccだ。これに対しルノーのM5P型エンジンはボア79.7mm、ストローク90.1mmで、排気量は1798ccとなる。
メガーヌR.S.の心臓は直噴ヘッドにツインスクロールターボを組み合わせ、大幅なパワーアップに成功した。もちろん、プレミアムガソリン仕様だ。
また、日仏合作とわかるのは、フリクション低減技術の「DLCコーティング」、「ミラーボアコーティング」などの技術を日産が技術供与していることである。
ちなみに弟分のルノー ルーテシアR.S.などが積む直列4気筒直噴ターボエンジン(M5M型)とジュークNISMOのRSに搭載しているDOHC直噴ターボ(MR16DDT型)も、基本設計が同じだ。どちらも排気量は1618ccで、パワーススペックもかなり近い。
GT-Rと同一スペックの心臓を持つステージアも存在
日産はゴーン体制になる前にも積極的にパワートレーンを共有化している。直列6気筒エンジンの傑作と言われた“RB26DETT型”DOHCツインターボは、1989年8月、R32型スカイラインGT-Rに積まれてデビューした。このエンジンは改良され、後継のR33型とR34型GT-Rにも搭載されている。
また、RB26DETT型ツインターボは、1997年10月にステーションワゴンのステージア 260RSにも移植された。これはオーテックジャパンが手がけた特別仕様車だ。
ステージアは7代目ローレルのシャシーにスカイラインの直列6気筒エンジンを積んだ快速ワゴンだが、260RSはスカイラインGT-Rと同じRB26DETT型エンジンと電子制御トルクスプリット4WDのアテーサE-TSを組み合わせた超ド級のスポーツワゴンだ。
2568ccのRB26DETT型DOHCツインターボは最高出力280ps/最大トルク37.5kgmを達成した。パワースペックはR33型GT-Rとまったく同じ。飛び抜けて速かった。
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