大昔から今に至るまで、ジムニーのタイヤカバーに描かれているサイ。長らくオプション品としてラインアップしているが、そもそもなんでサイなんだろうか!? 確かに強いイメージだけど、名前にかかっているワケでもないし……一体なんで!?
文/渡辺陽一郎、写真/SUZUKI
■納期爆長のジムニー!! 中古価格は約1.4倍に
最近はSUVの売れ行きが好調だが、この中でも特に息の長い車種がスズキジムニーだ。現行型の発売は2018年7月だから既に4年も経過。それでも販売店によると「ジムニーの納期は1年から1年半を要しており、ジムニーシエラはそれ以上に長い」という。
最近は新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻によってパーツの供給が滞り、クルマの納期が全般的に遅延するが、ジムニーは2018年の発売直後から1年以上と長かった。
ジムニーの届け出台数を振り返ると発売直後の2018年後半は、1か月平均が約1900台だった。小型/普通車のジムニーシエラは約600台だ。
それが2022年上半期(1~6月)は、コロナ禍の影響を受けながらもジムニーが約3600台、ジムニーシエラは約1400台に達する。発売直後に比べて国内販売台数を2倍に増やしている。
それでも納期は前述の通り縮まらない。販売店は「生産台数を増やすほど、ジムニーを希望するお客様の来店も増える」という。最近は現行ジムニーを街中で頻繁に見かけるようになり、購入を希望するユーザーもますます多くなったのだ。
納期が遅れると、顧客は当然に迷惑を被る。納車を待つために下取りに出す車両の車検を改めて通すなど、余計な手間と出費を要することもある。
また、中古車価格が高まるなど流通の混乱も招く。現行ジムニーXCの新車価格は190万3000円(4速AT)だが、走行距離の少ない中古車は、250~270万円で売られている。比率に換算すれば1.3~1.4倍で、いわゆるプレミアム価格だ。ジムニーの納期が適正なら、中古車がこのような高価格で販売されることもない。
■関係ないのに何でジムニーにサイ!? そのワケとは何だ!
ジムニーの外観を改めて見て気付くのは、スペアタイヤのカバーなどに、サイのイラストが描かれている。正確には、
●ディーラーオプションで用意されるスペアタイヤハーフカバーデカール(9845円) ●ボディの側面に装着するサイドデカール(3万305円) ●ボディ背面のデコステッカー(3795円) ●ルームミラーカバー(1万615円) ●フロアマット(1万5015円~2万515円) ●携帯リモコンカバー(3520円)
などに、サイのイラストがあしらわれている。サイがジムニーのキャラクターになっているわけだ。
なぜジムニーにサイを組み合わせたのか。同じスズキのアルトラパンには、ウサギが描かれているが、これはラパン(Lapin)がフランス語でウサギを意味するからだ。
しかしジムニーは違う。初代ジムニーの発売は1970年で、当時は悪路を走破する車両としてはアメリカ製の「ジープ」が有名だった。悪路向けSUVのトヨタランドクルーザーなども「ジープタイプのクルマ」と呼ばれた。
そこで軽自動車のサイズに収まるジープタイプのクルマという意味で、ジープ(Jeep)+ミニ(Mini)、即ちジムニーという車名になった。
上記のようにジムニーの車名とサイは関係がない。それなのになぜサイが描かれているのか。スズキに問い合わせると、以下のように返答された。
「アフリカのサバンナなどに生息するサイは、固く分厚い皮膚と伸びた角、恐竜を思わせるフォルムを備える。普段はのんびり暮らしていても、縄張や仲間を守るためには、どんな相手に対しても臆することなく猛スピードで突進する勇敢さも持っている。
スズキのデザイナーは、この特徴に注目して、サイを本格4WDの堅牢さと力強さを併せ持つジムニーの力強いイメージに重ね合わせた」
このマークは、1981年に2代目ジムニーのSJ30型が登場した時に作られている。鎧のような皮膚をまとい、重心低く突進する姿をデフォルメしたデザインは、瞬く間に世界中のジムニー愛好家に浸透した。今ではジムニーのシンボルとして定着して、幅広いユーザーから親しまれている。
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