去年の年末年始、帰省中の出来事。家族で温泉に向かうため山あいを運転していると、勾配のややキツい下り坂のカーブでクロカンが一台ガードレールに刺さっていた。衝撃からか、リアの初心者マークが外れかけている。
幸い大事には至らずこちらもほっとしたが、ガードレールの向こう側は崖でなにもなく、車一台分引っかかる場所を間違えればそこにガードレールはなかった。他人事とはいえ、お腹の底がずーんと重たくなったのを覚えている。
クロカンのように重心が高く重い車は、雪道、とくにカーブではそのコーナリング性能の悪さが露呈する。「重いから大丈夫でしょ」なんていう認識の人がもしいれば、それはとんでもない勘違いだったりするのだ。とはいえ、そういう知識は実際に走ってみて初めて得られることも多い。
雪との付き合い方はなんでも「めんどくさがらず、時間をかけて」。雪道を走る際に気をつけてほしいことを、交通コメンテーター西村直人氏による解説、また読者の皆さんから寄せられた質問に答える形でまとめてみた。
※本稿は2014年12月のものに適宜修正を加えています
文:西村直人、ベストカー編集部/写真:Adobe Stock、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2015年1月10日号
■プロが指南! 雪道ドライブのポイントとコツ
(TEXT/西村直人)
雪道ドライブでの極意は“急”が付かない運転操作。物理的な側面からみればそのとおりで雪道路面の摩擦係数は乾燥路面の3分の1程度。さらにこれが凍結路面では10分の1程度にまで下がるわけだから当然だ。
ここではそんな雪道でも慌てない運転操作の基本とともに、初心者に多い雪道ドライブにおける勘違いしやすいポイントを整理してみたい。
まずは雪道への準備から。雪道の準備といって真っ先に思い浮かぶのが、「スタッドレスタイヤ? チェーンの準備?」といったクルマ側の準備だが、初心者ドライバーは最初に身なりから考えたい。ここで大切なのは靴。スノーシューズはNGだ。
これは都市部の初心者ドライバーにしっかりと覚えて頂きたいのだけれど、生まれ育った環境から雪道に慣れているならともかく、靴底の厚いスノーシューズでの運転は時として繊細なペダル操作の妨げになってしまう。
冒頭で“急”操作はNGとしたが、裏を返せばジワッとした操作が必要だということ。その点、防寒のためモコモコのインナーが敷き詰められたスノーシューズでは足が靴のなかで踊ってしまい、とてもじゃないが繊細な操作には向いていない。運転は慣れた靴で行いスノーシューズは持ち込みで!!
つぎに大切なのは手袋。後述するタイヤチェーンの装着などで外作業の可能性が高くなる雪道では、手先の悴みからステアリングワークやシフト操作に支障をきたすことも。
そこでオススメしたいのが防水性のあるネオプレンという素材を使い、掌側に滑り止め加工が施された手袋だ。機能のわりに安価で、ラゲッジルームからの荷物の出し入れ時にも重宝する。
■雪道のカーブは事故多発の要注意スポット!
(TEXT/西村直人)
さて、いよいよ雪道ドライブだが、まずは雪道の特性から知っておこう。雪道走行時における事故形態では、やはりカーブでの事故が多いのが特徴。
これを防ぐには、とにもかくにも直線部分でしっかりとスピードを落とす減速操作が肝になる。また、その時のブレーキングも乾燥路面と同じように踏むのではなく、最初はジワッと踏み込んで減速度合いから路面の状況を把握してから徐々に踏力を強めていこう。
日中であってもカーブ手前が日陰になっている場合は路面が凍結している可能性もあるので、後続車に気をつけながらカーブ手前の直線路で軽めのブレーキングテストを行い、ブレーキの利き具合を確認し予め減速しておく。また、交差点では右直事故にも注意。これは直進側/右折側、両方の場面で意識すべし。
雪道にはスタッドレスタイヤ。
今や常識となりつつあるが、これとて万能ではないことを肝に銘じてほしい。たとえ4WDであってもだ。雪道では側溝が雪で隠れていることも多く、知らずにそこを通ればスタックしてしまう。
おおよそタイヤの3分の1が埋まってしまった場合はほぼ自力での脱出は不可能なのでJAFなどに救援を!
幸いにそれよりも浅くなんとか脱出できそうな場合は、前後の安全を確認して、前後に車体を動かすべく、D←→Rレンジ(MTなら2速ギヤと後退ギヤ)を交互にいれながら、少しだけアクセルを踏み込み勢いが付いたところで脱出する。
タイヤの前にたまった雪を掻くために小さなスコップがあるとさらにイイ。
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