販売絶好調の状況が続いているトヨタの5ナンバーミニバン、新型シエンタ。実はあまりアナウンスされていないが、ハイブリッド車のブレーキシステムが大幅に改良されているのだという。ちょっとマニアックな視点から国沢光宏氏にその内容をレポートしてもらおう。
本文/国沢光宏、写真/茂呂幸正、池之平昌信
【画像ギャラリー】新世代のブレーキシステムが凄い!? 新型シエンタを写真でCHECKだ!(30枚)画像ギャラリー■お待たせしません、のはずだった新型シエンタだが……
2022年8月の発表後、トヨタもしばらくは「生産可能台数が多いため、あまりお待たせしないで納車できると思います」と言っていた新型シエンタ。実際、発表当初は年内に納車できるというディーラーも少なくなかった。
しかし! 新型シエンタの人気ときたら驚くほど高かった! すぐ納期は半年になり、直近だとトヨタの納期情報によれば「詳しくは販売店にお問い合わせください」。
この表記、基本的に「マイナーチェンジやフルモデルチェンジまで納車できません」か、「納期1年以上かかるかもです」みたいなイメージでいいと思う。つまり、新型シエンタも超人気車になってしまったということ。
しかも「比較的入手しやすいと思われる半導体を使いました」だったのに、11月には半導体不足で5日間もラインを休止する。トヨタの生産ライン、いつになったら正常化する?
■密かに採用? ハイブリッドの電動油圧ポンプ直接式ブレーキシステムが興味深い!
閑話休題。絶大な人気車になった新型シエンタは、カタログばかりかプレスリリースにも出ていない新技術がハイブリッドのブレーキシステムに採用されている(その後、新型クラウンにも採用された)。
ふつうの人からすればどうでもいいような内容かもしれないが、クルマ通なら興味深く思うハズ。ハイブリッドや電気自動車など回生機能付き電動車のブレーキ全般を含め、紹介してみたい。
ご存じのとおり、電動車は発電機(モーターと兼用)を持つため、エンジンブレーキならぬ回生制動して走行エネルギーを電池に貯める。トヨタ式ハイブリッドの場合、60km/hから上手に停止すると、回生した電力だけで40km/hまで加速できるというから素晴らしい!
ただ、回生制動だけだとブレーキ力は弱い。急減速しようとしたら発電した電力が大きすぎて電池の充電能力を超えてしまうからだ。
はたまた停止直前で速度が落ちると、これまた回生制動力は弱くなる。その時に使うのがふつうのクルマと同じ油圧ブレーキ。ブレーキペダル(単なるスイッチです)を踏むと、ドライバーが要求した制動力を回生制動+油圧で立ち上げるということ。
この時のブレーキ配分が相当難しく、煮詰めを上手に行わないと奇妙なブレーキフィールになってしまう。回生制動と油圧の協調、とても難しい。ハイブリッド車のブレーキフィールの悪さは、この点から生まれる。
ちなみに回生制動の効率を落とせばブレーキフィールはよくなります。トヨタ以外のメーカーを見ると、効率を落とす傾向。トヨタは初代プリウスから意地になって効率を追求しているため(トヨタのハイブリッドの燃費のよさの大きな要因になっている)、ブレーキフィールの悪さはトヨタだって100%認識している。
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