スバルの自社製エントリーモデルといえば「インプレッサ」。日本だけでなく海外でも人気が高く、レガシィ、フォレスターとともに主役を張っている。それゆえ、モデルチェンジするたびに大きくなっていった。
そして現在のインプレッサスポーツは、欧州のCセグメントに属するファミリーカーに成長。サイズ的にはフォルクスワーゲン ゴルフより長く、全幅も1775mmとかなり広い。もちろん、全幅が1700mmを超えているから3ナンバー車で、今やスバルが自社開発する5ナンバー車はゼロ。
一方、ホンダやマツダはフィット、デミオなど5ナンバーのコンパクトカーを日本だけでなく海外でも販売している。
1989年以降、税制上の優遇はなくなったものの、5ナンバー車は今も日本に適したサイズとして一定の人気がある。
スバルは5ナンバー車を技術的な理由で“作れない”のか? それとも“作らない”だけなのか?
文:片岡英明
写真:編集部、SUBARU
現在の5ナンバー車は“非自社製”のジャスティだけ
今から15年ほど前まで、スバルは小型車枠の5ナンバー車にこだわり、その枠の中で最高のクルマを生み出そうと努力していた。
今、スバルで5ナンバー車はトールワゴンのジャスティだけになっている。だが、ジャスティはダイハツトールの兄弟車で、OEM(相手先ブランド製造)だ。開発と生産はダイハツが行い、スバルは販売だけと割り切った。
海外で売りづらく、量を期待できないから5ナンバーサイズの小さいクルマは要らない、とスバルの首脳陣は考えた。同じ理由で軽自動車の開発からも手を引いている。
だが、ホンダはフィットやグレイスなどを作っているし、マツダもデミオを送り出した。筆者だけでなく、読者のなかにもコンパクトカーがスバルのラインナップにあってもよいのでは、と思っている人は少なくないはずだ。
スバルが自社製の5ナンバー車を開発しない理由は、数を見込めないからだろう。日本特有の小型車は軽自動車と同じようにボディサイズに制約がある。特に問題になるのが全幅だ。
年を追うごとに厳しくなる衝突安全性能、なかでも側面衝突は全幅1700mm以下では心もとないのである。世界レベルを超えようとすればドアなどは厚みを増す。そうするとキャビンにしわ寄せが出て、居住空間が狭くなってしまうのだ。
水平対向エンジンは5ナンバー車開発のネックになる?
ご存じのように、スバルは水平対向4気筒エンジンによるシンメトリカルAWD(四輪駆動)をコアテクノロジーとしている。飛行機メーカーを母体としているため「安全」を最優先しているのだ。
そのため、重心の低い水平対向エンジンにこだわっているし、駆動方式も路面に関わらず安定した走りのAWDを主役とした。また、運転支援システムのアイサイトも早い時期に実用化し、全車展開している。
水平対向エンジンは、その構造から全幅が広くならざるを得ない。が、20世紀のスバルは小型車枠のなかに上手に収めてきた。また、最近はダウンサイジングが主流だから、排気量も小さくできる。となるとエンジンルームはそれなりの広さでよくなるのだ。それよりも衝突安全のほうが大変だが、これも技術陣の踏ん張りでクリアできるはずである。
それよりも難関は、小型車枠のクルマだと海外で売りづらいことだ。コンパクトカーでも欧州勢は全幅が1700mmを超えている。小型車枠にこだわるとデザインが骨太にならないし、室内空間も広くしにくい。だが、百歩譲って全幅を30〜50mm広げれば躍動感あふれるデザインにでき、衝突安全性能も飛躍的に向上するはずだ。
また、スイフトスポーツやWRXシリーズのように海外でも人気が高いクルマはワイドフェンダーを被せるという手もある。日本仕様と海外仕様のフェンダーを変えれば、量を稼げるだろう。
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