スタッドレスへの履き替えなどでタイヤ交換を行なった時に、当然必要となるのがそれまで履いていたタイヤの保管です。
意外に繊細な一面もあるタイヤは、使用時だけでなく保管時にも気を付けなければいけないことが多くあります。商用車タイヤのプロ、ハマダユキオさんがタイヤ保管の注意点を解説します。
文/ハマダユキオ、写真/ハマダユキオ・フルロード編集部
タイヤはけっこう繊細
スタッドレスタイヤへの履き替えのタイミングで夏タイヤを破棄するなら良いのですが、まだ充分に使用できるタイヤなら春まで保管しなくてはなりません。
タイヤは常に風雨に晒され、灼熱のアスファルトから凍てつく路面までを走破し、あらゆる方向からの応力に耐え、高い空気圧を充填する高圧容器でもあることから、屈強なパーツのイメージがありますが、それはキチンと使用条件を守ってのこと。
実際にかなり強いんですが、弱い一面もある繊細ちゃんでもあります。
タイヤ単体でも、ホイール組み込みしたモノでも共通する条件として直射日光や雨ざらしは良くありません。
短期間なら然程問題は無いのですが、「使わないかもしれないけど捨てるには勿体無いから長期間保存しておく」というのは危ないかもしれません。一概にどのくらいの期間から危ないのかというキッチリした数値は出し辛いのですが……。
また、来季の履き替えには必ず使う、という場合でも野ざらしは止めておきましょう。保管場所は屋内で直射日光が当たらない所がベストです。タイヤはゴム製品です。ゴムは紫外線を照射されると化学反応を起こして劣化します。
タイヤには劣化を防ぐ老化防止剤が入っておりますが、これは走行によるタイヤのタワミで滲み出てくるモノだと考えてください。動きのない状態で積まれているだけですと老化防止剤もあまり沁み出て来ず、その効力は期待できません。
積んであるタイヤに直射日光を当てないように注意しましょう。
雨水には要注意
タイヤの外保管では、直射日光以外にも雨・雨水対策が必要です。
タイヤを樽積み(横にして積み上げる)すると、高さ2メートル以下でもタイヤ1~2本分のスペースにトラック1台分のタイヤを保管できます。しかし樽積みは雨水が入ると溜まりやすく、抜けにくいです。
雨水が溜まることの弊害の一つは、タイヤ内部の薬品などが沁み出てくる(調べてはいないですが、恐らく茶色く濁っています)こと。もう一つは、冬では少ないのですがボウフラなどの虫が発生することです。
タイヤの中の水は直射日光が入らず温室的に暖かく、虫の成育には最適なのではないでしょうか。
理想は定期的にタイヤを下ろして水を抜くのがベストですが、本数があれば大変な労力になります。積み上げたタイヤを揺さぶるだけでも水はある程度抜けますので対策をお願い致します。
そしてタイヤ内部に入った水は抜けにくいので当然乾き難いです。このタイヤ内部の水分はホイールへの組み付け時には様々な弊害を引き起こすので、組み替える場合には必ず水分を残さないように乾燥させてから作業を始めてください。
内部に水分を残したまま組み付け・組み換えをすると、パンクしない限り密閉容器なので乾く事はありません。そこへ空気を充填するワケですからスチールホイールの塗装に剥がれや傷があった場合は錆、腐食へと発展し、最悪の場合ホイールにクラックが入るかもしれません。
同様にタイヤ側にも細かい傷などがあれば、内部構造に使われてるスチール製のコードが錆び、コードの劣化から充填圧に負けて最悪バーストに至るケースも希にあります。
また、ホイールバランスをとるためにホイールにウエイト(バランス材)を打ち込んてバランスをとることがあります。砂のようにサラサラのバランス材を入れる場合は、水分でダマになり効力を失くす場合があります。
さらに、最近ではTPMSなどの圧力センサーが標準装備の車両(車輪)もございます。充填する空気はドライヤーを通したドライエアという指定があるくらいなので、水分は精密機器であるセンサーの寿命の低下や故障の原因にもなります。タイヤ内部の水分は完全に除去して組み付け作業をお願い致します。
ホイールとのセット組を保管する場合も屋外では雨水に注意が必要です。
ホイールに組み付けした状態ではタイヤ内部への雨水の侵入はありませんが、樽積みにするとホイール本体のリム付近等に水が溜まる凹みがあるため、錆の発生や腐食によるホイールの強度低下が懸念されます。
雨水が溜まらないようにシート掛けをしたり、定期的に水を除去するよう、お願い致します。