路面電車が走る街で、同じ出発地点から同じ目的地へ向かう路線バスと路面電車がある場合、どちらを利用するのがベストなのだろうか。
文・写真:中山修一
■(1)北海道 函館駅前〜湯の川
北海道有数の観光地である函館。玄関口となるJR函館駅前と、温泉地・湯の川は6.5kmほど離れているが、湯の川へは路面電車と路線バスどちらを選んでもアクセスできる。
函館駅前から路面電車の函館市電に乗ると、五稜郭を経由して湯の川停留所までの所要時間は32分だ。
では路線バスを使うとどうなるだろう。路面電車の湯の川電停に最も近いバス停は「湯倉神社前」だ。
函館駅前バスターミナル〜湯倉神社前を通る路線バスがあるかと言えば、ちゃんと函館バスが運行している。
しかも市電とほぼ同じ経路、まさに軌道の隣を走るという、競合関係のような路線が2系統ある。
99A系統「椴法華(とどほっけ)支所前」行きと、91C系統「釜谷」行きがそれで、この2系統のいずれかに乗車して駅から向かうと約27分で湯倉神社前に到着する。
もちろん渋滞などがなければ、の話であるものの、時刻表の上ではバスの方が5分ほど早く着けるので、所要時間的にはバス優勢と言える。
ただし、運賃で見ると市電250円に対しバス270円で市電のほうが安い。また、市電は日中なら6〜8分おきに出ているのに対し、99A系統は1日6本、91C系統が1日11本と本数が少ない。
バスの出発時刻が近く、ちょっとでも早く行きたい時という、だいぶピンポイントな条件が揃えば路線バスに乗るのがベストだが、そうでなければ市電の運賃と本数の多さに軍配が上がる。
■(2)愛媛県 松山市駅〜道後温泉
続いては、松山市内の交通の要衝である松山市駅と、有名温泉地の道後温泉約3.6kmを結ぶ路面電車&路線バスだ。
松山市駅〜道後温泉間の市内電車とバスは、いずれも伊予鉄グループが運行している。同じ系列会社同士で競合!? と思わせるものの、とにかく電車でもバスでも道後温泉まで行けるようには出来ているのだ。
松山市駅から市内電車を利用すると、所要時間20分で道後温泉まで向かえる。約10分おきに電車が出ており、運賃は180円だ。
電車のように松山市駅と道後温泉(バス停名:道後温泉駅)を通る路線バスは2系統ある。
一つ目は8番線(系統)の「道後温泉駅」行き。この路線はJR松山駅を出発して松山市駅を経由する。日中30分おきだ。
8番線に乗ると道後温泉駅まで26分、運賃は310円……市電より時間がかかり運賃も高めとなっている。
実は市電と経路が異なり、街の中心部を通る市電に対して、8番線は街の外側を回ってから道後温泉に向かうため、時間も距離も少し長くなるのだ。
二つ目は52/53系統 松山空港線。こちらは路線名の通り松山空港からやってくるバスで、道後温泉駅止まりも数便あるが、基本的にはさらに郊外の「湯の山ニュータウン」まで足を伸ばす。
日中は大体30分おきに出ており、松山市駅〜道後温泉駅間の所要時間17分と最速。ただし運賃は市電よりも70円高い250円だ。
52/53系統も8番線や電車と経路が異なるのもポイント。同じ系列の事業者ということで、目的がシッカリ棲み分けされている。
松山の場合、函館と同様にバスのタイミングが合っていて、1分でも早く行くなら52/53系統、通常は市電、じっくり乗りバスを楽しみたい時は8番線、といったところだろうか。
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