ラリーやレースで自らハンドルを握る豊田章男会長。そのせいかグッとクルマ好きの身近に感じる。章男会長はこれまでもクルマ好きへのメッセージを多く語っているが、なぜそこまでクルマ好きにこだわっているのか?
※本稿は2023年2月のものです
文/佃義夫、写真/TOYOTA、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2023年3月10日号
■電撃発表! 2023年4月に豊田章男社長が会長に就任!
トヨタ自動車社長が2023年4月に交代するという発表は、突然で電撃的なものだった。
トヨタは1月26日に役員人事を発表するとともに、トヨタイムズで緊急の会見を行い、6月の株主総会を待たずに4月に豊田章男社長の会長就任と、後継社長に佐藤恒治執行役員(レクサスインターナショナル・GRレーシングカンパニーのプレジデント)が就任することになった。
豊田章男社長は佐藤氏を選んだ理由を「何よりもクルマ好きのエンジニア出身」と、自らのクルマ好きと同類であることを強調した。
そして「これからのトヨタをチームプレイでモビリティカンパニーに仕上げてもらう。そのために佐藤新社長をサポートしていく」と語ったが、どこの誰よりもクルマ好きな豊田章男「会長」の存在感はさらに高まることになりそうだ。
■茨の道を歩んだトヨタの御曹司
豊田章男社長といえば、「豊田家の御曹司」のトヨタトップ人事が発表されたのが2009年1月で、ちょうど14年前に遡る。
当時はリーマンショックによって世界の自動車業界が多大な影響を受けていた時期で、トヨタも2009年3月期決算は4610億円の赤字転落という創業以来、最悪の赤字幅となり、「未曾有の危機真っ只中での御曹司の社長就任で、お手並み拝見という冷ややかな視線ばかり感じていた」と章男氏本人も振り返っている。
加えて、米国での大規模リコール問題による米下院公聴会出席の苦境などもあり、「嵐の船出」だった。
だが、米下院公聴会での章男社長の証言は「私は誰よりもクルマを愛し、トヨタを愛し、お客さまに愛していただける商品を提供することを最大の喜びと感じてきた」という言葉から始まって、この証言はクルマを愛する豊田章男社長を米国ばかりか世界に知らしめるものとなったのだ。
さらに、米公聴会の直後に米CNNテレビのトーク番組に生出演し、司会のラリー・キング氏から「あなたは何のクルマに乗っているのですか?」と聞かれた際に「年間200台のクルマに乗っています。クルマが大好きなんです」と答えたという。
「考えてみれば“I love cars”という強い思いがあったからこそ、社長になってからの苦しい日々を乗り越えられた」と本人も述懐している。そこに豊田章男社長が言い続けてきたのが、「もっといいクルマをつくろうよ」だった。
豊田章男社長のクルマ好きの原点は、やはり祖父の喜一郎氏が創業したトヨタ自動車工業、さらに工販合併したトヨタ自動車初代社長となった父の章一郎氏に繋がる「豊田家嫡流」の意識であろう。
コメント
コメントの使い方