北米トヨタの大型トラック用燃料電池パワートレーンキットが、カリフォルニア州大気資源局より「ゼロエミッションパワートレーン」に認定された。この認定は車両がインセンティブを受けるための条件にもなっているため、燃料電池の商用化に向けては重要なマイルストーンだ。
トヨタは2023年後半よりケンタッキー州の工場で新世代のトラック用水素燃料電池モジュールの生産を予定しており、今回の発表後に北米のトラックメーカー2社がこのパワートレーンを採用する大型FCEVトラックを発売した。
もちろんトヨタは乗用車のシャシーメーカーではあるが、北米の大型車市場ではティア1サプライヤーとしてコンポーネントの提供に徹することで、燃料電池技術の普及を図っている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/Toyota Motor Sales, U.S.A.・Kenworth Truck Company
カリフォルニア州がトヨタの大型トラック用燃料電池パワートレーンを認定
米国でクラス8トラック(重量車区分で最も重いクラス)を製造しているメーカーと、それを運用している運送会社は、ますます厳しくなる排ガス規制に適合するための新たなツールを手に入れた。
トヨタ・モーター・ノース・アメリカ(以下、トヨタUSA)は2023年4月24日、同社の大型車用燃料電池電動パワートレーンキットがカリフォルニア州大気資源局(CARB)のエグゼクティブ・オーダー(EO)により「ゼロエミッションパワートレーン」(ZEP)に認定されたと発表した。
このパワートレーンキットには、水素タンク、燃料電池スタック、バッテリー、電動モーター、そしてトランスミッションが含まれている。同機をパワートレーンに採用するトラックもゼロエミッションに認定されるので、輸送の脱炭素を目指している運送会社には、ディーゼル車に代わる現実的な選択肢が用意されることになりそうだ。
米国の州の中でも、ロサンゼルスやサンフランシスコなど巨大な経済圏を抱えるカリフォルニア州は、全米に先駆けて厳しい環境規制を導入することで知られている。
その規制当局であるCARBのZEP-EOは、対象のパワートレーンがCARBのレギュレーションに従ってゼロエミッションであるとともに、州内で販売するために必要な排ガス基準にも適合していることを(公的に)認定するものだ。
車体メーカーは認定パワートレーンを使うことで各種のインセンティブ(助成金)を受けることができる。車両価格の高さがバッテリーEV(BEV)や水素燃料電池(FCEV)トラックの普及を妨げており、公的なインセンティブの有無は商用化に向けて重要な要素となる。
こうしたインセンティブには、CARBの「ハイブリッド&ゼロ・エミッション商用車の購入事業者に対する助成金プロジェクト」(HVIP)のほか、昨年ロサンゼルス/ロングビーチ港で導入された「クリーントラック基金」(CTF)、さらに一部の連邦政府の助成金なども含まれている。
ちなみに大型FCEVトラックとしては、2022年12月にニコラ・トレFCEVがZEP-EOを受けており、HVIPの基本額だけでトラック1台当たり24万ドル(約3250万円)という巨額の助成対象となった。
トヨタUSAで先進モビリティのシニアプログラムマネージャーを務めるスコット・フリードマン氏は次のようにコメントしている。
「トヨタはあらゆるモビリティソリューションにおいて排出をなくそうとしています。私たちの燃料電池電動パワートレーンは、大型車による輸送の排出削減において水素が重要な役割を果たすことを証明しました。
CARBからZEP-EOを受けることは私たちのチームにとって重要な成果で、そのために膨大な時間と労力を費やしてきました。間もなくこのパワートレーンを一般販売できることを嬉しく思っています」。