最近のクルマには、ボディのさまざまな場所に、クルマのボディの流れをスムーズにする整流板「タイヤディフレクター」(フロントタイヤ前部に装着される、黒い整流パーツ)が装備されています。空気抵抗を減らして、燃費向上、走行安定性向上、風切り音低減といった効果が期待できるタイヤディフレクターですが、ここでは、特にタイヤ周りの整流に効果のあるタイヤディフレクターとエアカーテンについて、その仕組みと効果を詳しくご紹介します。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:HONDA、NISSAN、エムスリープロダクション
タイヤ周りで発生する損失は、想像以上に大きい
クルマが走行すると、ボディの凹凸部で空気の流れが剥離して乱れや渦が生成し、これによって空気とボディ表面に摩擦力や圧力変化が起こり、クルマの進行を妨げる空気抵抗が発生します。空気抵抗を減らすには、極力ボディの凹凸を減らし、ボディ表面の流れの乖離や渦の発生を抑えて、スムーズな空気の流れを生成する必要があります。
ただ、タイヤ周りについては少々複雑で、回転しているタイヤ前面下部に衝突した空気の流れは、タイヤで巻き上げられ、タイヤハウス内のタイヤ接地面前側の圧力を上昇させます。これは、前進するクルマを後ろに押し戻す方向に働くため、タイヤによる空気抵抗が増えてしまいます。また、ホイールハウスから外に噴き出す流れも発生し、ボディ側面に沿ったスムーズな空気の流れを阻害します。
以上のように、走行中に回転しているタイヤは、空気抵抗を増やす大きな要因であり、それを低減するために採用されているのが、タイヤディフレクターとエアカーテンなのです。
タイヤ前面に衝突する流れを整流するタイヤディフレクター
タイヤディフレクターは、フロントバンパーの下、タイヤ前方の床下に垂れ下がるように装着された黒いベロのような整流板のこと。タイヤ前面に当たる走行風を、下向きや横向きに整流することよって、タイヤ接地面前側の圧力上昇を抑えて、空気抵抗を減らす手法です。車種やタイヤサイズによって空気の流れ方は変わるため、最適な形状はそれぞれ異なり、メーカーによってはタイヤスパッツとか、タイヤストレーキともよばれています。
タイヤ前面に直接走行風を当てないという発想自体は古くからあり、1970年代にはエアダムタイプのフロントスポイラーを装着したツーリングカーや、それを真似たチューニングカーが流行りました。これも、タイヤやボディ下面に潜り込もうとする流れを遮り、側面にかき分ける狙いがあるものでした。市販車でも、2000年頃のBMWの3シリーズなどの欧州車は、張り出しタイプのフロントバンパーを積極的に採用していましたが、これもタイヤ周りの整流を意識したものです。
タイヤディフレクターは、見た目が地味でメーカーも積極的にアピールしないので、その起源は明らかではありませんが、高速走行を重視する欧州車では2000年以前から装着され、国内では2010年頃から多くのクルマで装着が始まったようです。現在は、ほぼすべてのメーカーで採用され、前輪だけでなく後輪の前にも装着されています。
コメント
コメントの使い方昭和の時代にはエアロディッシュホイールやナット部をカバー付きにする事でタイヤ周りを整流する物があったが継続はしていないですね。
車体はエアロでCD値競い合うほど。ただ、日本では恩恵に預かれるほどの物ではない。OPでエアロ有りが車体デザインで一体化する。
もはやミニバンタイプではクーペやセダンに空気抵抗では敵わない。
高速でも100キロ、街中だと40~60キロ程度の日本では、空気抵抗なんてほとんど考えるに値しません。
燃費や車体の安定感を求めるのなら、空気抵抗を気にするより、ドライバーが痩せるのが一番ですw
Le系譜 様
>BEVのパワートレインの効率は、内燃機関よりはるかに高いため ここだけ逆にするとすっきり読めるかもです
様々に数字を出していて、どういう計算だろうと興味深く読み進めていました。しかし
>BEVのパワートレインの効率は、内燃機関よりはるかに高いため
この言葉と結局最後まで根拠示さなかったことで、記事全体が信用できなくなってしまいました。
車での速度変換効率こそEVは高く見えますが発電効率や送電・充電ロス含めると内燃機関が14%も効率がいい上に、重量エネルギー効率では80~100倍ガソリンが優れています