いまや自動車の話題を独占しているトヨタの新型アルファード/ヴェルファイア。はたしてそのスタイリングは、旧30系にくらべてどう変わったのか? かつてアルファードの姿を「ギラギラ光る金歯」と評した自動車ジャーナリストが、新型アルヴェルを穴が開くほど眺めて分析した!
文/清水草一、写真/トヨタ、ベストカーWeb編集部
■戦国武将の兜にも似たギラギラ感
日本、いやアジアを代表する高級車、アルファード/ヴェルファイアの新型車が発表される日を、今か今かと待っていた。自動車デザインを論ずる者にとって、アルファードのデザインほど、注目に値する存在はないからだ。
かつて大型ミニバンは、そのオラオラしたフロントフェイスが、古典的なクルマ好き(筆者を含む)に嫌われたが、先代アルファードが登場した時は、そのあまりのブッ飛びぶりに敬服するしかなかった。それは明らかに、自動車デザインの新境地だった!
当時私は、新型アルファードのデザインを、このように評している。
「新型アルファードの顔にはギョッとした! それはギラギラ光る金歯だったのだ! かつて戦国武将は、防御の機能よりもひたすら強力な威圧感を求めて、兜のデザインを進化させた。アルファードの金歯も、見ているとクセになってくる。こんなギラギラした顔は韓国車や中国車にもまだない! ギラギラ感なら世界の最先端、世界一だ!」
私の予言通り(?)、アルファードは日本のみならず、全アジアで大人気となった。我々の想像力をはるか高高度で超えたトヨタのデザイン力に、降参の他はなかった。
それほどの大ヒットモデルの新型だ。どのようなデザインにするか、非常に難しかっただろう。大ヒットの次期型は、往々にしてキープコンセプトになり、期待外れに終わっている。果たして新型アルファードは、さらなるデザイン革命を見せてくれるのか?
■50年代のアメ車に通じる装飾性
登場した新型アルファードの第一印象は「えっ! ぜんぜん変わってないじゃん!」だった。そのフロントフェイスは、先代の正常進化版であり、完全なキープコンセプトだったのだ。
一瞬ガッカリしたが、顔からサイドに目を転じると、明らかに変わっている。こっちもキープコンセプトだが、面のうねりはより大胆かつ豊潤になり、センターピラー部のイナズマ型の跳ね上がりは、昔懐かしいヤンキー風。ウエストラインはテールに向かって大きく滑らかに下がり、50年代のアメ車的な装飾性を感じる。箱型ミニバンとしてはフォルムにスピード感がある。
先代アルファードも、サイドパネルの豊かなうねりがデザイン上の大きな美点だったが、新型はそれをもっと絞り、もっと開放して、華やかに仕上げている。これほどの強いうねりを、先代と同じ全幅(1850ミリ)で実現していることに驚かされる。
フロントフェイスに関しては、先代アルファードのほうがギラギラしていてインパクトが強いが、デザイン全体を見比べると、新型のほうが明らかにカッコいい。センターピラー部のイナズマは、やりすぎと言えばやりすぎだが、現代の自動車デザインは、やりすぎないと埋没する。やりすぎが、すぐにニューノーマルとして消化されてしまうのだ。
発表会でプレゼンテーションを担当したサイモン・ハンフリーズ氏(デザイン領域執行役員)は、「箱型ではないワンボックス。デカさにふさわしい美しい筋肉を身に着けた。もう箱型なんて言わせない!」と述べたが、その言に同意せざるを得ない。
このパネル面のうねりや尻下がりのウエストラインには、箱型であって箱型とは思わせない躍動感がある。その分、ウロコのようなフロントフェイスも、どこだけ目立ち過ぎず、ナチュラルな印象だ。これに比べたら先代は、箱に巨大な金歯を付け、サイド表面にうまくシワを寄せただけかもしれない。新型を見たら、先代のデザインが古く思えてきた。キープコンセプトとしては大成功だ。
新型アルファードは、アルファードファンの期待に応えるだけでなく、さらなる顧客を獲得しそうな予感がする。
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