元日産でR35 GT-Rの開発を率い、現在は台湾で新車開発を行う現役自動車開発者水野和敏氏。
ベストカーでおなじみの「水野和敏が斬る」だが、今回は新型BMW 3シリーズとクラウンを試乗していただきました。
絶賛の嵐がやまない3シリーズですが、水野さんの目から見ると少し足りない部分があるといいます。またクラウンについても思うことがあったようです。
天才開発者はいったいこの2台をどのように見るのでしょうか?
文:水野和敏/写真:池之平昌信
ベストカー2019年4月26日号
■静的評価でわかるBMWの空力への本腰の入れ方
皆さんこんにちは、水野和敏です。今回は、フルモデルチェンジしたばかりのBMW3シリーズを、さっそく評価していきたいと思います。
3シリーズの対抗といえば、順当に考えればベンツCクラスということになるでしょう。しかし今回はあえて、日本車を代表する4ドアサルーンとしてトヨタクラウンとともに評価していくことにしましょう。
今回の3シリーズは直4、2Lターボの330iMスポーツで価格は632万円、一方、クラウンは3.5Lマルチステージハイブリッドを搭載するG・Executiveで718万7400円。
動力性能ではクラウンが勝っていますが、価格的にも3シリーズのほうが安いというのは、ちょっと意外です。
さて新型になった3シリーズですが、やっとBMWも空力性能を真剣に投入してきた、ということが見て取れます。
これまでの3シリーズはホイールアーチとタイヤ間の隙間が大きく、またバンパー形状も含めホイールアーチ内に巻き込む風圧が、フロントのリフトや走行抵抗の原因となっていました。
しかし今度の新型ではこの隙間がベンツ並みに小さくなっています。また、フロントバンパーのカド部分の形状もよく考えられています。
バンパーサイドを流れる風がきれいにホイール側面を流れるようにフィレットも付けられていて、ボディサイドへと滑らかに繫がっていく。やっとこれでベンツのレベルに追いついたという感じです。
一方のクラウンはこの部分が古いのです。ホイールアーチの隙間は依然としてコブシが入るほど大きいし、バンパーからホイール側面への風の流れも整流されていないため、ホイールアーチ内に風を巻き込んでしまっています。
3シリーズはリアの形状も空力を意識していることがわかります。まず、リアホイールアーチのオープニングクリアランスを目一杯詰めてきた。
私のコブシが入らないほどの隙間です。後方にむけて、リアバンパーサイドの面の作り方もしっかりと考えられている。スムーズに車体後方に向けて風を流すことで、バンパー後方下部で渦ができない。やっとBMWが本気で空力に取り組んできましたね。
リアホイールアーチ部を見ると、時計の針でいう1時の位置あたりに、ベンツが付けているような小さな整流板が付いています。
この部分でわざと小さな空気の乱れを作り、リアタイヤ部分でできた大きな渦を消してスムーズな風の流れを車体後方に誘導しているのです。5シリーズよりも圧倒的に空力の技術レベルを上げてきました。
コメント
コメントの使い方