新型BMW3シリーズとクラウンを現役開発者が斬る 目新しさがない?? 3.5Lよりも2.5Lがいい?? 

■クラウンより2段階進んだ3シリーズの空力技術

 こうして新型3シリーズとクラウンを並べると、3シリーズの空力技術は2段階ほど先をゆきベンツ並みまで進化してきました。ただちょっと気になるのがナンバープレートの下についているレーダー。この位置だと前走車が飛ばすチッピングの直撃を受けます。

 キドニーグリルはルーバーの隙間が覆われていて、通常空気が流れないようになっています。水温が一定以上になるとシャッターが開く仕掛けになっています。これは排ガス対策。コールドスタート時にいかにすばやくエンジンを暖めるかが厳しくなる排気ガス規制のキモとなってきます。

シャッター付きのキドニーグリルは排ガス性能向上にも一役買うもの。暖機運転が少なく済むのだ

 ボディパネルのチリ合わせは特別どうということはなく、これまでどおりのBMWクォリティ。フロントドアの左右で隙間が大きく違っています。正直言って緻密なベンツのレベルとは比較になりません。

 ボンネットフードを開けると、裏側にはインシュレーターなどがいっさいなく、一枚板。これはちょっと驚きです。

 エンジンルーム自体に特別の新しさは感じませんが二重隔壁のバルクヘッドなど、車体構成などはBMWの作り方そのもの。

 ただ、オーバーハングはずいぶんと長く10㎝ほど伸びた印象です。

 エキマニからタービン周辺はむき出しで断熱&遮熱処理などはありませんが、先ほどの吸音&断熱材のないボンネット外表面での夏場の火傷や、排気規制のコールドスタートのことを考えるのであれば、保温&断熱のカバーなどは付けたほうがいいと思います。

 ターボのブーストコントロールは電制アクチュエータを使っていますね。

 3シリーズの後席は、これまでリアタイヤハウスが後席背もたれ部に食い込むようになっていて、乗り降り時の開口部がとても狭かったのですが、この新型は食い込みが小さくなり乗降性がずいぶんと改善されています。

 お尻がスッと座面に滑り込むようになりました。ただ、シル段差の深さは相変わらず。乗り込んで座ってしまえば、足元スペースは充分あり、不満はありません。

サイドシルが深く乗り込む際に「ヨッコイショ」となりがちなBMW。新型3シリーズについてもそこは変わらず

 ただ、背もたれがちょっと立ち気味ですね。23〜24度程度でしょう。クラウンはもうちょっと寝ていて27度くらいの傾斜角で寝やすいです。

 トランクは奥ゆきがあって広いですね。フロア下の隠し収納はありません。荷室フロアはフラットになって収納性が高まりました。以前のBMWは荷室両サイドに車体メンバーの段差があり、使い勝手が今ひとつだったのです。

 クラウンは荷室フロアがちょっと高いのですが、ハイブリッドでバッテリー搭載のことを考えれば、まあこれはやむを得ないでしょう。ただ、奥ゆきなどトータルで3シリーズの荷室は大きく使い勝手がよさそうです。

■空力はいいがなぜかときめかない新型3シリーズ

 ただ、ここまで細部を見てきましたが、新型3シリーズは「新しい3シリーズ」というワクワク感をあまり感じません。確かに空力は大きく進化していますが、そのほかでの新鮮さを感じないのです。ときめかないのです……。

 運転席に座ると、BMWにしてはずいぶんと垢抜けたデザインになりました。ステアリングは握り部が太く、メーターパネルはついにフル液晶画面を使ってきました。

 せっかくのグラフィカルなのですから、もっといろいろなデザインのメーター表示をできるようにすればと思います。

 左回転のタコメーターは、こういうことをデザイナーはやりたがるのですが、やはり運転するドライバーの感覚としては馴染めません。速度計とタコメーターの指針は連動して動くものなので、同じ回転方向で動いてほしいです。

 ドライバーは無意識のうちに速度計とタコメーターの動きのバランスを見て、アクセルの踏み加減などを制御しているのです。

 しかも、決して視認性がいいとは思えません。しかし、針の指している数字を大きく表示するなど、液晶表示ならではのグラフィカルの提案と工夫は感じますけれど。一方でインパネセンターに置かれるカーナビモニターは、ちょっと小さい印象。

 せっかくすべて新設計しているのだから、もっと大きくしてもよかったと思います。これはもったいないです。

次ページは : ■3シリーズに”駆け抜ける喜び”はまだあるのか?

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