2023年12月28日、ダイハツ工業は報道陣に対して「主な仕入れ先企業へ二度目の説明会を実施した」と発表した。ダイハツは認証不正問題における第三者委員会からの報告書を12月20日に発表、今週から国内全組み立て工場の稼働と出荷を停止し、国土交通省からの立ち入り調査を受けている。先般の発表によれば、少なくとも2024年1月いっぱい(国交省の調査結果が出て再出荷の許可が出るまで)は国内4工場の出荷停止が続く見込みで、月間7万台におよぶ自動車の部品仕入れと出荷、販売が滞ることになる。このことによる経済的な影響を最小限にすべく、また信頼回復に向けて、ダイハツは親会社であるトヨタの協力を得て、各仕入れ先企業や販売店への補償、ユーザーへの説明を進めてゆくことになる。
文/ベストカーWeb編集部、写真/ベストカーWeb編集部、ダイハツ
■関連会社への補償も「トヨタが支える」
自動車は一台ごとに、およそ2万点におよぶ部品の集合体であり、それがひとつの組み立て工場で1日あたり数百台単位で出荷されており、産業としての「すそ野」が広く、今回の件のように最終組み立て工場が出荷停止となると(つまり「出口」が詰まると)一次下請けだけでなく二次受け、三次受けまで含めて数千社の関連企業にマイナス影響が出る(ダイハツの場合は、直接取引のあるTier1が921社、二次下請けであるTier2が4945社、Tier3が2114社/帝国データバンク)。
ダイハツ工業によると、今回の認証試験不正問題を公表後、昨日で二度目となる「主な仕入れ先企業への説明会」を実施。一度目、二度目とも300名以上の出席者がいたとのこと。
説明会では「組み立て済みの部品はそのままダイハツが購入すること」、「出荷停止期間中の(一次受け、二次受け、三次受け企業の)部品機械の保全費用や従業員の給与についてもダイハツが補償すべく検討中」という内容が告げられたという。
もちろん関連企業一社ごとに規模も金額も内容も大きく異なるため、一社ずつそれぞれの事情を聞きながら、補償内容と今後の見込みについて話し合いを進めているそう。
そうなると気になるのがダイハツの「キャッシュ」。なにしろ国内全工場が出荷停止ということは、その期間の実入りがゼロになるということで、金融機関から融資を受けるにしてもしばらくは自社の手持ち資金で回してゆかざるをえない。しかも「いつまで工場が止まるのか」は、いまもまったく見えていない。
そうしたなかでも自社の(正規、不正規を問わず)従業員の給与補償は必要不可欠だし(ダイハツ労組と給与保障額について話し合いを続けている)、ダイハツ自身が持つ機械の保全費用も必要となる。「治療中の点滴」は、誰がどれくらいどうやって打つのか。
この点について報道陣から質問が飛ぶと、同席していたトヨタ側から「その点につきましては、トヨタとして融資枠を用意しており、ダイハツを支えていきます」と説明があった。
ダイハツからの補償は、当面は一次受け企業が窓口となって二次受け、三次受け企業へ展開してゆくことになるが、「キャッシュについてはトヨタが支える」ということになった以上、資金切れの心配なさそう。
トヨタとしても本件発覚当初に「ダイハツの立て直しに積極的に介入し、全面的に支える」と言ったことを粛々と実行しているわけで、この融資枠の用意についても、立て直し策の結実のひとつと言えそう。
いっぽうで、今回の認証試験不正問題の根本的な原因調査と改善は、まだ端緒についたばかりといえる。現在、国交省による調査が続いており、処分内容も決まっていない。またダイハツ自身も、二度とこのようなことが起きないような体制改革と調査をトヨタとともに続けている(それにはもちろん経営体制の見直しも含まれる)。
この原因調査と抜本的な対策についても、ひとつずつ明らかになり次第、広く報告する、とのことだった。
コメント
コメントの使い方