日産の海外向け高級ブランドINFINITIが2023年10月に発表した「ビジョンQe」。同ブランド初となるBEV(100%電気自動車)のコンセプトモデルであり、これが次期型スカイラインとなるのはほぼ間違いない。
しかしながら、いかにもコンセプトモデル然としたそのデザインからは、次期型スカイラインをイメージしようともなかなか難しい。しかし実は、ビジョンQeよりも次期型スカイラインのデザインに近いのではないかと思われるコンセプトカーが、5年前に登場していた。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、INFINITI
デザインはQインスピレーションのほうが現実味を帯びていた
インフィニティのQインスピレーションコンセプトが公開されたのは、2018年の1月15日より開催された北米自動車ショー(デトロイトショー)だ。インフィニティは当時、Qインスピレーションコンセプトについて、最先端の自動運転技術と、夢の可変圧縮比の4気筒エンジン「VCターボ」の両方を搭載した、次期プレミアムセダンだとしていた。当時の日産は、このVCターボエンジン推しであったため、インフィニティにも拡大採用しようとしたのだろうが、北米市場がその後、急激なバッテリーEV志向となったことで、Qインスピレーションコンセプトを諦め、バッテリーEVのQeコンセプトを発表する、という経緯になったのだろう。
パワートレインはさておき、Qインスピレーションコンセプトのモダンかつ純白のエクステリアデザインは、4ドアクーペのようなスタイルであり、縦のラインを多用したフロントヘッドライトやフロントグリル、大開口のフロントバンパーなど、のちに登場するQeコンセプトにも共通しているようにみえる。ただ、ボディサイドのキャラクターラインや、エッヂの効いたボンネットラインなどは、むしろQインスピレーションのほうが現実味を帯びているようにみえないだろうか。
このまま出しても十分に通用するような完成度
Qインスピレーションは、インテリアもかなりつくり込まれていた。運転席から助手席の端まで繋がった、超幅広の1枚ディスプレイを採用しており、メーターやナビゲーション、その他のインフォメーションまで表示させるデザインとなっている。これらは2020年以降に登場したアリアやノート、オーラ、サクラなど、昨今の日産車に共通するデザインだ。ホワイトカラーの前後シートも、乗員の身体を包み込むような形状に見える。
ダッシュボード付近は、無駄を削ぎ落とし、クリーンかつシンプルなデザインでまとめている。センターコンソールの後席側には、ワイド液晶ディスプレイを設置。最新のBMW7シリーズのように、ルーフ側に大型モニターを付けていないのは、後席からの視界を確保したい、という狙いがあるのだろう。サイドドアはコンセプトカーらしく、大開口の観音開きタイプだったが、その他は、このまま出しても十分に通用するような完成度だ。
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