とかくエコ面が注目されがちな電気自動車(BEV)だが、実はパワーにおいても侮れない能力があり、特にトルクの太さは驚くほどだ。今回は、大トルクのクルマを愛する人に向けてBEVのスゴさを紹介!
文/長谷川 敦、写真/テスラ、日産、BMW、ポルシェ
■BEVってどういうもの?
まずはBEVの定義について簡単におさらいしておきたい。
BEVとは「Battery Electric Vehicle」の略で、日本語に訳すとバッテリー式電気自動車になる。電動モーターで走るのだからバッテリー式なのは当たり前だろうと思いがちだが、実は電気自動車にはいくつかの種類がある。
まずは先に紹介したBEVで、これは電動モーターの動力が100%車載バッテリーから供給されるもの。
ほかには日産e-POWERでもおなじみのシリーズ式ハイブリッドモデルがある。このシステムは、内燃機関(主にガソリンエンジン)を回して発電を行い、その電力を車載バッテリーに供給して電動モーターを動かす。
そしてFCV(Fuel Cell Vehicle)がある。これは水素と酸素の化学反応で電力を生み出して電動モーターを回すタイプ。FCVは日本語で燃料電池車とも呼ばれている。
内燃機関と電動モーターの両方を動力に使用するハイブリッド車も広義では電気自動車に含まれるが、純粋に電動モーターのパワーだけで走るわけではない。
この記事の主役であるBEVは、車載バッテリーを外部電力から充電し、その電力で走行するタイプで、発電する機関を搭載していないのが特徴だ。公共の充電設備が少ないことや航続距離の短さなど、BEVにはまだまだ改善すべき点もあるが、インフラの整備が進めば今後市場でのシェアを拡大することも予想される。
■なぜBEVは大トルクになるのか?
さて、ここからが本題。多くの人はBEVがパワフルだという印象を持っていないと思うが、実は電動モーターの特性を考えるとそうとはいいきれない。
車体を加速させるのに重要な要素は最高出力よりも最大トルクである。出力とトルクの違いを解説するのは別の機会に譲るが、とりあえずクルマの発進にはトルクが大きく関わっているということを覚えておいてほしい。
一般的なガソリンエンジンでは、エンジン回転数がある一定の数値に達した時に最大のトルクを発生する。これはクルマのカタログで最大トルクを見ると470Nm/6100rpmなどと書かれていることでわかるはず。
つまり、そのクルマのエンジンは6100rpmの時に最大のトルクを発生するということ。
そしてBEVの動力となる電動モーターはガソリンエンジンと大きく異なる出力特性を持っている。ガソリンエンジンの最大トルクが、ある程度回転数が上昇した時点で発生するのに対し、電動モーターの最大トルクは電気を流した瞬間に発生する。
ということは、停止状態からの加速においてBEVはガソリンエンジン車に対して大きなアドバンテージがあることになる。
ただし、電動モーターのトルクも流す電流(電圧)の大きさに比例してアップするので、メーカーもアクセル開度に応じて自然な感覚で加速するよう制御を行っている。そのため市販のBEVがアクセルを踏んだ瞬間に急発進するわけではない。
また、ガソリンエンジン同様にモーターのサイズが大きくなれば発生するトルクや最大出力もアップする。だからすべてのBEVがパワフルということにはならない。
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