「スーパーカー」といえば、フェラーリやランボルギーニなど、海外メーカーのモデルを思い浮かべる人は多いと思うが、かつては日本のメーカーでもスーパーカーが開発され、なかには市販直前までこぎつけていたモデルも少なくなかった。
実際に販売されていればと思うと残念でならないが、今回はそんなお蔵入りとなってしまった幻のスーパーカーをいくつかご紹介しよう。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:MAZDA、NISSAN、TOYOTA、HONDA、MITSUBISHI、YAMAHA、ベストカー編集部
初代NSXの後継となるはずだった、ホンダ「HSV-010」
HSV-010は、初代NSXの後継として登場する予定だったクルマだ。北米市場を意識したスタイリングとメカニズムをまとい、2007年のデトロイトモーターショーにおいて、「Acura Advanced Sports Car Concept」として初披露されていた。
3.5リッターV10エンジンをフロントに搭載し、レジェンドにも採用されたSH-AWD(駆動力を曲がるために活用する電子制御四輪駆動技術)を採用。市販化に向けて開発が進められていたようだったが、リーマンショックによる景気後退などにより、プロジェクトは中止となった。
残念ながら市販モデルが登場することはなかったが、このモデルをベースにしたスーパーGTのGT500カテゴリのワークスマシン「HSV-010 GT」は、2010年〜2013年にかけてレースに参戦。投入初年度のデビューイヤーでチャンピオンを獲得するなど、ホンダファンを沸かせる偉業を達成した。
スペックはまさにレーシングカー マツダ「RX500」
マツダが1970年の東京モーターショー出展したコンセプトカー「RX500」。コンセプトカーとはいえ、実際に走行可能な状態まで開発が進んだモデルであり、まさに市販化が期待された一台だった。
1967年に登場したコスモスポーツに採用された10A型ロータリーエンジンをミッドシップに搭載し、前後重量配分は50:50を実現。トランスミッションは4速MTで後輪を駆動する。車両重量は850kgで最高出力は250ps、最高速度は250km/hに達するなど、当時のレーシングカーのようなスペックであった。
キャビンへのアクセスドアはシザーズ式で、リアに鎮座するエンジンルームのドアはガルウィング式を採用。ウェッジシェイプの低く構えたデザインはスーパーカーの王道を行くものであるが、残念ながら市販化には至らなかった。
いつ市販化されてもおかしくないといわれていた、日産 MID4/MID4-II
日産「MID4」は、1985年のフランクフルトモーターショー、そして同年の東京モーターショーでお披露目されたコンセプトカーだ。
「ミッドシップレイアウトでフルタイム4WD方式のスポーツカー」であることが名前の由来であるMID4。エンジンは3.0リッター V6 DOHCのVG30DE型、最高出力230psのものがミッドシップに搭載され、4WDシステムにはHICAS(四輪操舵システム)が備わるなど、当時の日産の最新技術が詰まった逸品であった。このMID4の評判がよかったことで、日産は市販化を前提にさらに開発を進め、2年後となる1987年の東京モーターショーでは、進化版である「MID4 II」を発表した。
MID4よりも丸みを帯びた流麗なスタイリングとなり、エンジンはさらにハイパワーな3.0リッター V6DOHCツインターボ+インタークーラーのVG30DETTを搭載、最高出力は330psに達した。プロトタイプとしながらもその完成度は高く、テストコースでの試乗会も開催されるほどだったため、いつ市販化されてもおかしくないという噂があったが、価格や販売上の問題からプロジェクトは中止となり、お蔵入りとなってしまった。
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