世界に一台しかない超個性派「アコードエアロデッキ」挑戦しすぎてあえなく撃沈したが今見ると新鮮で超エモい! 

世界に一台しかない超個性派「アコードエアロデッキ」挑戦しすぎてあえなく撃沈したが今見ると新鮮で超エモい! 

 果敢な挑戦という言葉がピッタリなのが1980年代半ばのホンダだった。そのなかで、ひと際異彩を放っていたのが、3代目アコードシリーズの3ドアハッチバック、アコードエアロデッキ。ここではアコードエアロデッキはどんなクルマだったのか? 当時の新車インプレのほか、今買えるのか調べてみた。

文/写真:ベストカーWeb編集部

■ワンダーシビックは大ヒットしたのだが、アコードエアロデッキは大失敗!?

3ドアハッチバックのワンダーシビックに比べ、ノーズが低く、ルーフが長い。日本での売り上げは芳しくなかったが、欧州での人気は高かった
3ドアハッチバックのワンダーシビックに比べ、ノーズが低く、ルーフが長い。日本での売り上げは芳しくなかったが、欧州での人気は高かった

 ホンダは昔から、他がやったことのないことに挑戦するメーカーである。特に1980年代は一番輝いていたように思う。しかし、ちょっと微妙……、やらかしてしまったか!?……というクルマも存在する。

 ここで紹介するのが、3代目アコードセダンの発売から1カ月後、1985年7月に発売した、ホンダアコードエアロデッキである。

「ロー&ワイド」の考え方を基調に、ロングルーフのビュレットフォルム(弾丸形状)を採用、新しい3ドアの概念を提示した
「ロー&ワイド」の考え方を基調に、ロングルーフのビュレットフォルム(弾丸形状)を採用、新しい3ドアの概念を提示した

 セダンと同様にリトラクタブルヘッドライトを採用したスーパースラントノーズ、窓周りのフラッシュサーフェス化によりCd値は当時としては良好な0.34を達成した3ドアハッチバックスタイルは空気を切り裂く“ビュレットフォルム(弾丸フォルム)”と謳われていた。今改めて見ると、こんなデザインは見たことがなく、新鮮でカッコいいかもと感じさせる。

 さらにマニアックな観点からいいなと思える点として、ロングルーフの後端付近から始まるハッチゲートの作りがある。

 「ルーフ部分まで回り込んで開く」というタイプ。なおかつルーフに回り込んでいるゲート部分はガラスだったため、デザイン上のアクセントになっているだけでなく、後席居住空間はとっても明るく開放的だった。

 メカニズム面でも果敢な挑戦があった。フロントノーズを低く見せるために、ストラットではなく、スポーツカーや高級車に使われるダブルウィッシュボーンをFF車としては世界で初めて採用したのだ。

 搭載されたエンジンはB20A型2L、直4DOHC(160ps/19.0kgm)とB18型1.8L、直4DOHCエンジン(130ps/16.5kgm)、A18型1.8L、直4SOHC(110ps/15.2kgm)の3種類。

 しかし、1989年8月、4代目アコードがフルモデルチェンジしたが、エアロデッキはラインナップされなかった。日本での売れ行きはサッパリだったからだ。全長4335×全幅1695×全高1335mmとサイズが大きく、後席乗降性がよくない3ドアであることが要因か。

 しかし、欧州市場では日本とは違い人気は高かったため、その後シビックが欧州市場でデビューする際はエアロデッキのサブネームが与えられたほどである。

 発売当時の新車価格は142万7000〜200万7000円。はたしてアコードエアロデッキは今買えるのか? 大手中古車検索サイトを調べてみたが、在庫車はなかった。ローダウンしてスムージングするとカッコいいかもと思ったが、残念!

■当時の新車インプレッションを引っ張り出してみた

リアゲートはルーフ部分まで回り込んで開くタイプ。なおかつルーフに回り込んでいるゲート部分はガラスだったため、デザイン上のアクセントになっているだけでなく、後席居住空間はとっても明るく開放的だった。
リアゲートはルーフ部分まで回り込んで開くタイプ。なおかつルーフに回り込んでいるゲート部分はガラスだったため、デザイン上のアクセントになっているだけでなく、後席居住空間はとっても明るく開放的だった。

 その斬新すぎるデザイン、広大な室内の居住性、そしてFF世界初のダブルウィッシュボーンによる高いロードホールディング性という、アコードエアロデッキが持つ特徴は、当時、どのように評価されていたのか、ベストカー1985年7月26日号に掲載された御大・徳大寺有恒氏のインプレッションを抜粋する。

 アコードのなかで、最も話題にすべきはエアロデッキなる名称のロングルーフボディであろう。たしかに、このスタイルのモチーフは弟分のシビックで成功をおさめている。そして、今度のアコードではよリホイールベースが長いので全長が長くなり、それがこのスタイルの難しいところである。

 ホンダはその冗長となるイメージをうんと低くすることで逃げようとした。全高1335mmというハイトはGTカーに近いものだ。そのやり方はかつてのボルボ1800ESやリライアントシミターGTEと同じものだ。

 エンジンフードが低ければ視界がいい、それは安全につながる。しかも、カッコいいというワケだ。それははじめプレリュードのエンジンフードが従来型より10cmも低いラインがひかれたときから始まった。

 しかし、高く立ったストラットタワーはどうすることもできない。エンジンフードを10cm低くする目的のためにホンダは新しい技術を開発した。

 ダブルウィッシュポーンサスペンションの採用である。このサスペンションはコストが高い。それに設計が大いに難しい。素フロント、リアともにスペースに成約があり、最後の最後まで悩んだ結果、ダブルウィツシュポーンを選んだのはパツグンな乗り心地にあったという。

 アコード/ビガーの素晴らしさは理想に対して起こる数々の間題を高い技術を惜しみなく駆使して次々とクリアしていったことにある。こういう設計ポリシーを持つクルマは日本にはほとんどない。

 前荷重を軽くしたい、それはエンジンのオールアルミ化をする。乗り心地とハンドリングを高いレベルでバランスさせたい、それはダブルウィッシュボーンを用いる。

 多くの従来型国産車はサスペンションチューニングでそれを逃げる。電子制御サスペンションで、欠点をカバーしようとする。この考え方とアコード/ビガーは根本的に異なる。こういうクルマ作りは本来ヨーロツパ車のものだ。アコード/ビガーは初めてといえるそれへの挑戦である。

■アコードエアロデッキ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4335mm×1695mm×1335mm
・ホイールベース:2600mm
・車重:1080kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1958cc
・最高出力:160ps/6300rpm
・最大トルク:19.0kgm/5000rpm
・燃費:12.0km/L(10モード)
・価格:205万9000円(1985年式2.0Si 5MT)

世界初のFFでダブルウィッシュボーンを採用した脅威の3ドアハッチバック、アコードエアロデッキを見よ!(10枚)画像ギャラリー

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